29.crisis
非常警報が鳴っていた。
ジョーは速度を落とさずにそのまま中へ突っ込んだ。
「運転が荒くてすまない、ドク」
「大丈夫だ!」
遥かジープの居場所を確かめ、ヘリポートを真っしぐらに走り抜けた。
広大なポートの最端、ジープはネヴァレンド州警機動隊ヘリの前に着く。フットプライドは降り、リリィ親子を引きずり下ろした。
「来い! このヘリに乗るんだ、早く!」
追うハードレインたちを抜く、キャンピングカー。
「何だ? あの車は!」
ヘリのコクピットのドアが開けられる。血眼のフットプライドは二人に銃を突きつけながら力ずくで中に乗せた。リリィが叫んだ。
「絶対に逃げられない! 撃ち落とされるのよ」
「黙れリリィ! わ、わからんのか? 俺の愛が! お前を愛すればこそ俺はこうして」
「さっきの話は本当なのね! あなた彼を……エイブラハムを戦場で見捨てたのね? 何故助けてくれなかったの? どうして!」
「うるさい黙れ! ……お、お前こそが俺の報酬だ、お前を手に入れて俺は満たされなければ!」
「彼を見捨てておいて私に近づいた……」
「リリィ、お前は覚えていなかったな! エイブラハムに会いに軍の寄宿舎に来ていたお前を……案内した、俺はお前を見ていたんだ」
ヘリのエンジンが回り出す。リリィはボビィを抱きしめた。
「俺はお前が欲しかった」そう、顔の汗を袖で拭いながらフットプライドは言った。
「奴らを……エイブラハムを助けたところで直ぐに死んでたさ……ウイルスに侵されてな。俺はグレイヴスに迎えられるはずだった。だが騙された。だからせめて、お前だけでも手に入れたかった」
上昇し始めるヘリ。
「リリィ。こうなれば生きるも死ぬも……」
ボビィは下を見る。
「マ、ママ見て、おじちゃんの車だ! ジョーおじちゃんだ!」
ジョーは一旦車を停め、隣りのハイランズにハンドルを預けた。
「どうするつもりだ?」
「あのヘリに乗り込む。ドク、真下へ合わせてくれ!」
ジョーはそう言って後ろへ回り、フック付ロープを手にルーフを開けた。
髪を束ね上へ上がり天板に立つ。
風が唸る。狙うヘリは高度を上げてゆく。
ハイランズは移動するヘリの下に車を近づけた。
ジョーは身構え、ロープを投げた。ロープのフックがヘリのスキッドに掛かり、ジョーは勢いよく吊り上げられた。
ロープを手繰り、ジョーはヘリに迫る。
やがて辿り着き窓越しに中を確かめるとボビィがジョーを呼んだ。
「おじちゃん!!」
フットプライドは慌てふためき、操縦桿片手に拳銃を抜き発砲する。窓ガラスが砕け散り、風が吹き荒れる。弾丸を躱したジョーは手を伸ばし、ロックを解除して中に乗り込んだ。
「キサマーーッ! 生きていたのかぁーーーーっ!」
「お前がレオ・フットプライドか」
フットプライドは容赦なく引き金を引くが、もう弾丸は残っていない。
「これまでだ」とジョーが銃を取り上げグリップで殴りつけた。狂乱して吠えたてるフットプライド。
「こうなったら道連れだぁあああ!!」
機体が大きく傾き、降下してゆく。
ジョーはフットプライドの襟元を掴み、引きずり上げて床に投げ倒した。
轟音を立て落ちてゆくヘリ。ジョーは操縦席に座る。リリィとボビィがジョーを見つめた。
時が止まる――絶体絶命。




