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JOKERMAN  作者: ホーリン・ホーク
21/33

21.your eyes

 二日目。その日は浜辺で夕食をとることにした。

 ボビィはすっかり元気になった。

 バーベキューを喜び、残さず食べた。

 陽が沈み、空と海の穏やかな赤色を背に、打ち寄せる波にボビィは()()()()()いる。その遊ぶ姿を見ながら、ジョーとリリィが座ってる。


挿絵(By みてみん)


「ボビィは明るいな」

 ジョーがポツリと言った。リリィは頷き、少し背を伸ばして微笑んだ。

「ええ。天性の明るさかしら。いつも励まされます」

「病気、治るのか?」

「小児喘息で……お医者さんは体を鍛えるのもいい。水泳とかって。薬だけに頼っても駄目みたい」


 ボビィに手を振るリリィ。彼女は知りたかった。


「ジョーさん。生まれは、どこなんです?」

「……エルドランド」

「……の?」

「あ、ああ、……ブリンギングス」

 ジョーは嘘をついた。

「そうですか。私はフリーホイールなんですが、ご存知ありません? 西の方の、小さな町で」

「あそこはいい所だ。自然に囲まれて。昔、友達が住んでいて行ったことがある」

「どれくらい前?」

「ん? と、いうと?」

「い、いえ……もしかしたら前に、会ったことがあるかもしれないと……」

「俺に?」

「ええ」

「さあな。……覚えがない」

「あなたといると、何だか懐かしくて… …初めて会った気がしないんです。 ……あ、ごめんなさい、私、いろいろと訊き過ぎたかも」


 ジョーは胸が締めつけられる思いがした。



 彼は遠く、海を見つめる。

 彼女は俯き、息をつく。

 熱い潮風。波の音。



 ジョーの方からようやく切り出した。

「あと二日もあれば着くだろう。ハイランズさんに連絡とって、それからだな」

 リリィはコクリと頷き、しっかりと顔を上げた。

「そう。早く落ち着かなきゃ。ボビィのためにも」

「……逃げきれると思うか? 奴から」

 リリィはジョーに顔を向け、目を見て答えた。

「あの子を守るため、たとえそれが逃げだと言われても、私はこうするしかなかった。あの暴力にはもう耐えられない」

「あの子に手を? フットプライドは」

「お酒飲むと人が変わって怖かった。酔って暴れて家の物壊して……。それで一度、ボビィに」

 彼女は言葉を詰まらせる。顔を伏せ、目に涙を浮かべ、言った。

「銃を向けた」


 ジョーは拳を握りしめる。怒りで全身の傷が疼いた。彼女はハンカチで顔を拭いた。


「たわむれだ、撃ったわけじゃないって言ったけど……もうつらくて……無理」

「逃げだなんて言ってすまない……」

「いいんです。ジョーさんには何もかも頼って、感謝しか……そう、とても……安心できるんです」



 遠くのボビィが二人を呼んだ。嬉しそうに声を上げている。立ち上がりながらジョーはリリィに言った。


「……俺の顔……怖くないか?」

「え?」

「ほ、ほら、こう……尖ってて厳つくて……まるで鬼のようだ」

 リリィはジョーを見つめ、微笑んだ。

「いいえ。あなたの目は……とても優しい」


 待てずに走ってくるボビィにリリィは手を広げた。

「ママ! 見て、カニ! 捕まえたんだ!」

「わあ、かわいい」

「ジョーおじちゃん、これ食べられるかな?」

「ははっ、こりゃ食べるには可哀想だ」



 ボビィはジョーの手を引き、波打ち際まで走って行った。二人が楽しく遊ぶ姿を、リリィはずっと見つめていた。

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