19.dead man
アナザーサイド署鑑識課。
指紋鑑定技師のグルムス・オルターは、訪ねてきたレパードにデータを渡した。ひんやり冷えた個室に響くレパードの嗄れ声。
「お、さすが早いな!」
穴蔵で陽に当たらないオルターは色白で痩せ型、大きな目をギョロつかせ挙動不審なところもあるが仕事はできる男だ。誰よりも早い。
「オルター、あんたがここにいてくれて助かったよ。俺はついてる」
もちろんレパードは彼の弱みも握っていた。だが、オルターの性癖は有名で今更感が否めなかった。いずれにせよオルターはレパードの頼みを喜んで引き受けていた。
「レパちゃん……アタシずっと待ってたのよ」
猫なで声にたらりと冷や汗をかくレパード。
「な、何だって?」
「別にもうバラしちゃってもいいわ。あんたにキスしたこと」
「ひぃーー! ま、待て、落ち着け!」
「タフでワイルドなあなたが好き」
近過ぎるオルターの頬をグィと押しのけ、レパードはデータに目を通した。
もう! ……と、オルターは記載の結びを指差す。
「見て。レパちゃん。【一九四五年、グレイヴスのヘストン・ヒルにて〝戦死〟】とあるわ」
「何だと?」
ニヤリと小さな黄色い歯をむき出し、オルターは戯けて言った。
「実は生きているのだ〜〜! ということかしら」
レパードはその経歴を今一度上から見入った。
【ジョセフ・ハーディング 一九一七年十二月十一日生まれ フリーホイール……】
オルターは訊いた。
「その男を捕まえるの?」
「いや、違うが……」
「じゃ誰を?」
「女と子供」
「こいつは何の関係が?」
「……わからん」
レパードは顎を摩りながら〝ジョセフ〟を見つめる。
――この目……確かに見たことがある……。
「レパちゃん。それで今から何処へ?」
「ノースフォレスト」
「ふ〜ん」
「……あ、そうだオルター。〝ハイランズ〟って医者を知ってるか?」
いかにも不健康そうだがと彼を見つめる。
「知らなーい。何? こう見えてもアタシ健康だし〜美容にも気をつかってんだから」
レパードはしらーっと視線を投げる。
「……変な病気とか、ないの?」
「ヤだもう!」
オルターは赤面、レパードの腕を掴んだ。
「言ったじゃない! 待ってたのよって」
「ちょちょ、ちょっっタンマ! ……い、幾らだ? この鑑定料」
「いらなーい。アタシが欲しいのは、あ・な・た」




