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「……で、冒頭となるわけです。お帰りなさい」

タイトルが微塵も関係しません。

一行しかない文章などを詰めに詰めただけのネタ帳です。

言葉遊びをしたいのに遊びきれないし、むしろ遊ばれてるなーって気持ちで眺めてください。

 なにも知らないままでも時間は巡る。そうして私は女学生から女子大生となって、気づけば大人となっていた。

 それが良いことかはわからない。ただ、二十歳まで生きたことだけが、事実としては残っている。

もうすぐ年も開ける師走も終わり。いかがお過ごしでしょうか。元気でいらしたなら、幸いでございます。


 ――――大人となっていた、だなんて齢二十歳の生娘がなにをいうのだ。

 自分が書いた文とは言え、思わずそう茶々を入れたくなってしまう。なかなかに青臭い文章となったものだ。


 眠った顔が美しいと、幼くなり可愛げがあると、どのかの小説で読んだ。しかしどうだろう、私の思い出す、人の寝顔はどれも間抜けのようだった。疲れ切って眠るからだろう、寝る姿勢ではないまま寝たからだろう。擁護という名の理由は浮かべども、ついぞ清らかな寝顔は思い浮かばなかった。写真や想像でのみ、それは唯一無二に美しかった。






人間は「自分」を中心に物事を関連づけて覚えるから、それが欠けると途端に物覚えが悪くなるよね。


 心の広いフリをした自己軽視が嫌いだ。時に、それは他人の好意すら軽んじる。謙虚さの皮を被った自己蔑視が嫌いだ。時に、それは他人の努力すら蔑ろにする。貶める。


 自分に価値がないとして、価値のない自分の記録した知識の覚え書きすら価値がないのか。価値がないものの生み出したものには、価値がないものを生かした分の付加はあるのだ。零を掛けられる謂れはない。

 誇りがないことを恥じよ。それは決して、傲慢でないことの証明ではない。誰かを貶めないと手に入らない自己価値を誇りと間違うな。他人を尊べ、学べ。完成されたものなどないと知れ。だが、自分の全てに価値がないと思うことと、自分が未熟だと理解することは違う。伸びしろを見いだせ、打ち止めにする見切りをつけられるほど、自分の判断に自信を持っていることに気づいて恥じろ。





 立入禁止じゃなくて、立ち去り禁止の札


 死にたがりながら生きてるより、生きながら死んでる方が、俺は見たくないな。

 死のうとしてる時が一番生き生きしているんだ。不思議だよなぁ。

 死んでしまいたいと思い続けるのは鬱々として重く耐え難かったが、死んでしまおうと思った途端に胸が空くような、虚無ではなく、軽くなるような、清々しい気持ちになった。





 結局どうしたって救われない。何も変わらない。不変が不老を指すなら否定するけれど、本質が変わっていない。ただ歳を重ねただけの変化しかない。





 その目は、じっとこちらを見ていた。時折、本能が目の乾きを訴えるのか瞬きはあった。ゆらと黒目が遠くの壁が床を意図せず這う時もあった。しかし、意思としては絶えずこちらを見ていた、ように思う。

抜き身の刀を持つ姿を正座で見つめていた。刃がこちらを向いていても、その刀身に己の服が、顔が反射しているのが目の端の肌色に輝く鈍光で感じられても。

 信頼ではなかった。

 ただ、生きるのを諦めていた者の目だ。さらに言うなら、虚ろではなかった。諦めるのだと言う強い意志を無意識に持ち、意地となって前を見据えていた。






「朝はね、ご飯がいいっていうの。パンもね白色だよーって言ったんだけど嫌だって」

 流石にその意見で納得するのは如何なものかと思うから、僕は曖昧に笑うだけに留めた。伏し目で、さらに見えなくなった小さな黒目は一度たりともこちらを映していない。

 おはよう、と日本人の朝の第一声に相応しい台詞は聞くことなく、主語も脈絡もない会話は、おそらく話す相手すら間違っている。変に高く舌ったらずなのに、可愛らしさが微塵も感じられない声は、今日も鼓膜を傷つける。

「先にね、歯磨きするの。綺麗だけど、美味しくなさそう」

 もう少し言葉を足してもよかっただろうに。話題が多い分、内容を圧縮したのだろう。添削が致命的だが、常に同じものを指す時に主語は略すものだと言う教えだけは引き継いだのだろう。そういうことにした。

「私もね、髪の毛だけはとかそうかなって思ったんだけど。ご飯が先かなって」

 その言葉でようやく合点が行く。触り心地の悪い不潔さすら感じさせる剛毛なくせ毛を梳く、えるわけもなく多毛に絡め取られた櫛がアーバンギャルドなアクセサリーとなった後ろ姿を眺める。

「時代を追い越しちゃったのかなぁ」

 どちらかというとコース外を走り出しているから今も昔もその先も、時代はそんなところへ辿り着かないだろう。

 当の本人は気にしていないのか忘れているのか。頭がわずかでも重いだろうになんてことは無く牛乳パックを直飲みしていた。いや、少し飲みずらそうか? あぁ、やめなさいっていつも言っているのに。

「私、もうそれ飲みたくない」

 おはよう、と挨拶するのが礼儀だと親御さんは教えなかったのだろうか。開口一番にただ一点を見つめて感想を述べた少女は、丁寧にアイロンをかけたシャツを着て、プリーツの整えられたスカートに脚を通していて、なんというか目のまでの個性的な髪型の少女とは真逆の出で立ちだった。

 凛と冷ややかな響きの声と、映すものを間違えなければ綺麗に輝いたであろう茶色の大きな瞳。赤ちゃんの毛を集めて作ったかつらでも被っているような細く柔らかな髪。

「何茶だっけ」

 言葉の外に、了承の意味を載せつつ、先ほど聞いた朝食に会うであろう飲み物を問う。




「どうしたらそんなに完璧になれるの」

歯と同様に黄ばんだ白目がぎょろつく。





「ねぇ、せんせい」 普段はそんな舌ったらずな幼い話し方をしないことを、俺は知っている。

「良い子になりますから、ねぇ、こっちを見てください」 良い子、が何か理解してものを言っているのだろうか。私には、良い子がなんなのかてんで分からない。



 お隣さんは、どうやら頭がおかしいらしい。

 そんな事実に気づいて早一ヶ月、そんな現実を受け止めて早一ヶ月。僕の部屋の壁は未だに塞がらない。











 ハナ先輩は面白い。

 軸の定まらないふらふらとした足取りで今日も僕の横を通り過ぎる。

 回遊魚のようなそれが僕は好きだった。

楽しかったですか? ……それは良かった。

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