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「授業を縫う思考」

不意に浮かんだまま勢いで書いたもの。相変わらずとびとびで書きたいところだけ。

こんな思考回路ですよ、てばらしてるみたいで恥ずかしい。これはフィクションです!

「出会えてよかったといわれる人間になりたい」

 なんだったかな。小学生の頃に書いた将来の自分についてか、中学生の頃に書いた十年後の自分についてか、それとも高校生の頃に書いた社会に出た自分についてか。大穴で大学生の頃に書いた葬式で言われたいこと。だんだん思いをはせる未来の年数が短くなっていくと思ったら、最後は未来が途絶えていた。ちなみに、各学生時代に本当にそれを書いたのかは覚えていない。さらに言うなら僕は十七歳。高校二年生の身であるので、最後の大学生の頃というのは嘘である。大学三年生の兄が本当にこの題について考えることになるのか、僕は知りえない。



 押し上げる眼鏡を幻視しそうな真面目な友人は、通学に時間を取るより勉学に励むべきだとのたまい、校風共に平凡だと言わざるを得ない偏差値のこの高校へと進学した。本当はここよりも近い高校があるのだが、最低限の環境は必要だと切り捨てられていた。分かりやすく言うと、偏差値がとても低い高校なのだ。僕の妹は個々に進学した。どう言い換えようと馬鹿だったからである。兄は遠い進学校へ通っていた。学力は悪くなかったようだ。


「で、何点だった?」

 話題そらしに効果なし。迂回はすれども、きちんと目的地へ着陸した友人は僕の紙飛行機で飛ばせないテスト用紙を見やる。視線で人を殺せるほどの力はないが、逃げ道を塞ぐ程度の効果はあった。無言で手渡す。黒板の隅に書かれた平均点と同じ数字が、そこにはある。得意不得意はあれど、僕は平均的な人間だった。



 誰が平均的な没個性の人間だったか。

 僕のものは、恣意的にでも故意的にでも意図的にでも故意的にでも、過失でも、壊れることになる。意味や目的の有無、善意や悪意、他者か自分か何にせよ、必ず。

 それは、誰にでも言えることかも知れないけれど。誰にでも言っていいことではなかった。



 僕の妹とは年子である。生命の神秘を知った当時の僕は、お盛んですねという嫌味を微量に生成した。どうやら双子がほしかったらしい。それも一卵性の。その夢の成れの果てが妹だった。と、悲劇的に言っては見たが、そうでもない。両親はただ小さい自分達に似通った服を着せて愛でたかっただけで、それ以外を求めたわけではなかったから。個人的には、兄さんと呼ばれないことが少し、悲しい。



「いいか。高校生活なんて一瞬だからな」

 最近になって掛けだした眼鏡を差し棒にしながら兄が言う。中学のときにも似た言葉を頂戴した。あの時はボールペンが差し棒だったかな。

「大学は?」

 前も聞いただとか突然何とか、そういった遠回りすることなく率直に尋ねる。懐中電灯を眼前で灯されたときのような反応で呻き動き歪んだ兄は、視力低下に拍車をかける電子機器に突っ伏す。

「一瞬なんだろうな」

 割としっかりとした声音が返ってきた。妙に大人じみた声だった。それもそうだろう。兄はもう成人済みなのだから。楽譜が読めないのに電子ピアノを叩いて揺れていた姿はそこにはなく、教科書を理解するためにパソコンを叩く猫背に歪んだ姿があった。

「でもまぁ、楽しいよ」

 ようやく用途を果たした眼鏡の奥で、隈の絶えない目と視線が合う。くしゃりと笑う姿は、いつもいつまでも僕の兄さんだった。


 二十歳を迎えるまでと、それから死ぬまでは、体感で同じくらいの速さで過ぎるらしい。どちらも未経験な僕に真偽は不明だ。一週間は長いし一年は短い。そんな感想を持つ。

 兄の一日は常に短いように見える。僕の一日は二十四時間だ。妹はどうだろう。


 妹は、生きるのに苦労する人間だ。そう十六年間ほど見てきて思う。彼女の世界は唐突に天井が迫り壁が透け地面が割れる。おまけに酸素も薄い。他人に感化されやすく、生きることに罪悪感を抱き周囲の目に怯え二転三転する世間に足を取られ、縮こまって膨らまない肺から幸福を取り逃がす。




 まだ自分は子供だって、無意識にせよ自覚しているやつらはいい。加減なしの強い敵ではあるが、まだ自分は変われるこれからがあると信じているから、救える。反対に大人だと認識しているやつらはだめだ。俺達を子供だからと加減してくれる敵が多いが、同時に未来を諦めているやつらも多い。その瞬間の感情の発露やストレスの解消にはなるが、自分を消したことに変わりはない。

 全力で否定はするな。それだけで自己否定に走り現実で自我を保てなくなって自殺するやつもいる。それくらい本当は柔らかいアイデンティティなんだ。

 誰かが肯定されるのが許せなかった。私の意見に影響されて、なんならパクって、それが賞賛される肯定されて受け入れられる。でも同時に私の発言では通らなかったことも理解している。私の人望の信頼の能力のなさが原因だってことも分かっている。でもだったら、私はどんな意見が浮かんでも黙していたい。その結果、非効率的な作業となってもいい。確かに効率的な作業は魅力的ではあるけれど、それよりも私は私が肯定される世界のほうが欲しい。

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