「不思議なアリスと鏡の国」
昔のメモ帳から掘り起こしたほかのアリスモチーフの物語
「私はなんて素敵な夢を見ているのかしら」「いや、夢じゃねぇし」
夢だと勘違いしているアリス、元ネタに沿ったストーリー展開
だから、確実にファンタジー、今回は住人が元ネタを知らない。
「流石、ルイス・キャロルの世界ね」「ルイ……?」
「何で追いかけてきた」「夢だと思って」「バカかこいつ」
鏡の国、たんに鏡が多い。とか好きってだけ。名産でもいいし。
移動がドラちゃんのドアよろしく鏡でもいい。
悲しいと水っぽい涙、悔しいと塩辛い涙。私の涙のお池はどんな味がするのかしら!
「白ウサギはどこ?」「あぁ?」
「白ウサギよ白ウサギ。アリスと反対な白ウサギ」
「無邪気で明るい平等に礼儀正しい凛としたアリスと真逆な白ウサギさんは?」
「お前が無邪気で礼儀正しいのかはおいといて……兄さ、前白ウサギは退職したよ」
「なぜ?」「胃潰瘍。ストレスせいだと」
「あぁ、わかっちゃうのがいやね。急にリアルになる」
某日、二足歩行の白ウサギが見えたので追いかけて穴に飛び込みました。
「はぁぁあああっ!? バッカじゃねぇのお前、普通飛び込むか? つーか二足歩行の白ウサギを見て追いかけるか、あ゛?」
見た目にそぐわず口の悪い白ウサギに、すごい勢いで罵倒された。
「いや、夢かと思って」
あはは、と笑う私を見ていた彼からブチッと何かがキレる音がした。あ、違う。切れる音がした。
「っ、じゃあ今から頬抓って夢かどうか確かめてやるよ!!」
そう叫ぶと、あろうことかうら若き女子高校生の頬を思い切り掴んできた。そしてその手が横に引かれ―――
「いっ、いひゃい、ひょっひょ! ひゃめひぇよ」
「な? 夢じゃねぇだろ? つか人語話せや」
お前が抓んでるから喋れねぇんだよ畜生。
そんな思いを込めた視線に気付いたのか、不意に頬が開放された。勿論、ゴムのようにパチンッなんて言わない。
「……よく伸びるなお前」
私の赤くなっているであろう頬を見つめて彼が呟く。そして、思い出すようにして口に手をあて呟く。
「そういや、落ちてきたときも枝が凄い音立てて折れまくってたし……」
耐えろ耐えるんだ私。こんなことで怒るだなんて、はしたない。
「お前、太ってんじゃ「黙れ、コスプレ変態うさ公がぁっ!!」
我慢無理。ていうか、女の子に言っちゃいけない言葉をサラッと口にしたコイツが悪い。
叫ぶのと同時に、あまり上がらない足を無理矢理振り上げて回し蹴りをした。
不意の出来事で反応が遅れたのか、後ろに下がることなく彼は私の蹴りを受け入れた。そして――――
「………………」
――――声を上げずに、綺麗に横に倒れた。