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第五話「やはり良く通る声だな」

ちょっとストーリー構成で手間取ってました。


1/29少し修正しました。

 傭兵は爆風に飛ばされ自身の後方にあった大木に打ち付けられていた。


「傭兵!」


 湖から出て駆け寄ると、ヨロヨロと傭兵は立ち上がるところだった。

 彼と顔を合わせ私は、驚愕した。

 棘岩の直撃を受け、間近で爆風を受けてなお、



 彼の表情は全く変わらなかった。


 頭からだくだく流れ落ちる血。常人であれば立っているのもやっとのはずの失血量にも関わらずそれを意に介さないその無表情さ、無感情さに、この男は本当に人間なのかと疑っていしまいそうになる。


「怪我はなかったか」

「……は、はぁ!?」

「怪我はなかったかと聞いている」

「そりゃこっちのセリフよ!あ、あんた、だって血が……」


 すると、不意に傭兵は顔を逸らした。


「ちょっと、何よそ見してんのよ?」

「いや……」


 傭兵の行動に疑問に思ったがそれどころではない。早く血を止めなければ。

 私は頭が粉砕されたロックグリズリーの遺体に駆け寄り、あるモノを探す。


(あった!)


 それは紫色をした拳大の石だった。それを持って傭兵の下まで戻る。


「頭下げて」

「何故だ」

「いいから!早く!!」


 彼は私よりも2、30C(セルリ)程高く手が届かない。その為相変わらず目線を合わさない彼を屈ませ、頭を無理やり寄せた。

 そして、見つけた石を当てる。


「――光よ、その力で彼の者の傷、癒し給え——」


 私の言葉と共に石が光を放つと、まるで時間が巻き戻ったよう傭兵の頭部の傷が塞がり出血が止まった。


「何だ、今のは」

「魔法よ。治癒魔法」


 魔法を使えるのは何も魔物だけではない。

 この世界の人間は多少の才能の差はあれど魔法を使うことはできる。だが、その力は同じく魔法を扱うことが出来る魔族――魔物や魔獣達――に劣る。

 その要因が今私の手の中に握られている紫色の石――魔力石——だ。


 人間が魔法を使うには空気中に存在する「魔素」と呼ばれる無色の成分が必要だ。この魔素を集め、呪文によって効果を付与することで魔法を発動することが出来る。

 そして、使用した魔素の量に比例して使用する魔法は強大になる。


 ところが、人間はこの魔素の収集効率が悪いうえに貯めておくことができない。それにより、魔法を使う為には魔素の吸収にある程度の時間が必要になる。


 しかし、魔物は違う。奴らは「魔力石」と呼ばれる魔素を大量に吸収し、貯蓄をすることが可能な物体を身体に持っている。

 更に魔法の発動に呪文を必要とせず、頭の中で効果を思い描くことでその魔法を発動させることが出来るらしい。

 これにより魔族は強力な魔法を連続で使うことが可能になる。


 だが、長所と短所は表裏一体という言葉があるように、魔族にとってこの魔力石は最大の長所であると同時に最大の弱点でもある。


 魔族の生命活動には魔素が大きく関わっている。

 特異な能力に強靭な身体。それらを維持するには魔素を血液と共に全身に循環させ常に肉体強化の魔法を発動し身体を維持している。それ故、魔素の供給源である魔力石を砕かれると魔族は自身の身体を維持できな無くなり死亡するのだ。

 おまけに魔力石は決まって眉間に存在するので、魔族を倒すには主に「頭を吹き飛ばす」か「眉間を打ち抜く」といった方法がとられる。


 さらに、魔力石は人間にも扱うことが出来る。魔力石には見た目に反して多大な量の魔素が詰まっている為魔法を発動する度に魔素を集めずとも強力な魔法を連続で行使することが出来る。

 ただし、魔力石を傷つけずに魔物を倒すことは難しいため魔力石はかなりの貴重品でもある。


(あれだけの爆発だったからダメかと思ったけど、奇跡的に無事でよかったわ)


 もし、魔力石が無ければ時間をかけて魔素を溜めなければならず、その間に傭兵が危険な状態になってしまっていたかもしれない。


「お前は魔法が使えるのか」

「そりゃ使えるわよ。これでも宮廷魔導師(ウチのお抱え)お墨付きなんだから」


 フンス、と鼻息荒く少し胸を張ってみる。同じ年頃の人と比べて私は呑み込みが早いらしく、使える魔法の種類も一般的な魔術師と比べても多い。


(まあでも実際、魔法を使った実戦なんてやった事ないから、攻撃魔法なんてほぼ護身術レベルだけどね……)

「さ、お腹も見せて。頭もヤバかったけどそっちも相当ヤバいはずでしょ」


 先ほど彼はロックグリズリーの岩攻撃の直撃を腹に受けた。その治療をする為に腹部の服を脱がそうと触れた瞬間、パンッという音がした。


「え?」


 突然のことで頭が追い付かなかったがどうやら彼が私の手を払ったようだ。


「え、どういうこと?」

「治療は必要ない」

「だってアンタお腹に攻撃を……」

「見間違いだ。俺は服を引っかけられただけだ。そのまま攻撃を受けたように見せかけ、死んだフリをしていただけだ」


 見間違い?本当にそうなのだろうか?

 だが、あの時確かに鈍い嫌な音がしたはずだが。

 自分の記憶を探ぐっていると今度は傭兵がじーっと見つめてきた。

 

「な、何よ?私の顔に何か付いてるの?」

「いや、ただ……


 お前は本当に女なのかと思っていただけだ」

「へ?」


 よく見たら彼の視線は私の顔ではなく、その下を向いていた。彼は今片膝をつき、屈んだ状態で私と顔を突き合わせている。


 つまり、


「へああああああああああああ!?」


 彼と出会ってから何度目かの奇声と同時に両腕で咄嗟に胸と下半身を隠す。


「あああああああんた、なにマジマジと見てんのよおおおおおおおおおおお!!」

「先の出来事からお前の全裸は見てはいけないものだと思い視線をそらしていたが、それをお前自らの手で戻された。だから見ても良いものだと判断し……」

「うっさいこのバカアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 顔から火が出る思いで服を置いた岩場に駆け出す私の涙は、夜の湖に煌めいた。

 絶叫と共に。


(小さくて悪かったな!!)

魔力石を持っている生き物のことを総じて魔物といいます。

魔物には人間に似た容姿をしている者もいます。

それと、長さの単位C(セルリ)cmセンチメートルと同じ長さです。

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