プロローグ
むかーしむかし。あるところに、とても大きな王国がありました。
あるとき王国にとても可愛らしいお姫様が生まれました。
両親である王様やお后様、国民の皆は大変喜びお姫様は沢山の愛情を受けすくすくと育っていきました。
しかし、そんな幸せな日々はそう長くは続きませんでした。
お姫様が十五歳になったある日、魔王を名乗る者によってお姫様は攫われ、王国から遠く離れた魔王のお城のてっぺんにある牢屋に囚われてしまいました。
かわいそうなお姫様。
恐ろしい魔王に攫われ、きっと怖い思いをしているに違いない。
王様は軍隊を動かし、勇者を募り、必死にお姫様を取り返そうとしました。
しかし、お姫様は全く怖がってなどいませんでした。
というか、思いっきり楽しんでいました。
お姫様は小さい頃から沢山の本を読んできました。
歴史の本や植物の本、その他にも様々な本を読んできました。
中でもお気に入りだったのは恐ろしい存在に攫われたお姫様を白馬に乗った王子様が助けるという物語の本です。
幾多の困難を越え悪者を倒し、姫を救い出した王子様と恋に落ち、結婚して幸せに暮らしました。
そんなありきたりなお話が彼女は大好きでした。
そして、いつか悪者に攫われた自分を救い出しにきた王子様と恋をしてみたいと思うようになりました。
そのため、お姫様にとってこの状況は願ったりかなったりなのでした。
親の心子知らずとはまさにこのこと。姫を救おうと軍隊を派遣している王様たちが可哀そうでなりません。
そんなことなど露知らず、魔王城のてっぺんの牢屋で王子様が来るのを今か今かと待っているお姫様。
どんな人が来るのか、会ったらどんな話をしようか頭は妄想でいっぱい。
が、一週間、一か月経っても王子様どころか王国からの助けも来ません。
お姫様の機嫌は日に日に悪くなっていき、巡回にくる魔王の手下に八つ当たりしたり、出される食事に徹底的にダメ出しするようになっていきました。
そんな日が続き、魔王の手下もビビりあがったある日……、
「いつになったら王子様は助けにくるのよーーーーーーーーーーーーー!!」
その日もいつものように姫の絶叫が石造りの牢屋に響いていました。
牢屋唯一の出入り口である鉄戸はイラついた姫が何度も蹴飛ばしたせいで無残にも歪み、王子様にあった時に少しでも良く見せようと手入れをしていた自慢の金色の髪もすでに乱れまくっていました。
ストレスも最高潮、もはや我慢の限界でした。
そんな時、
「敵襲!敵襲だーーー‼」
慌てふためく城内、戸惑う兵士たちの声。
その様子はお姫様の耳にも届きました。
(もしかして、王子様?王子様が助けに来てくれたの!?)
お姫様のテンションは百八十度回転、一気にマックスに。
即座に乱れた髪と服を整え、牢屋の簡素なベッドの上で膝を抱えて縮こまり、あたかも魔王に怯えるか弱い囚われの姫を演じました。
しかし、頭の中では、
『あ、あなたは誰?』
『姫、あなたを助けに来た王子でございます』
『え~ん!怖かったですぅ~!』
と助けに来た王子の胸に飛び込んでいくイメージトレーニングまでしている始末。
(準備は万端!さあ、王子様いつでも着て頂戴!)
しかし、王子様は来ません。
それどころかお城の周りでは何か大きな爆発音が聞こえてきます。
助けに来たのであれば、もっと戦う者の雄叫びや、剣と剣をぶつけ合う音などが聞こえてくるはず。
(あれ、なんかおかしくない?)
少し不安になったお姫様は牢屋の出入り口とは反対側の壁にある鉄格子付きの窓から外を覗こうとしました。
瞬間、
ドグオオオオオオオォォォォォォォン!
鉄格子の窓ごと壁が吹っ飛びました。
もちろんお姫様も。
砕かれた壁の破片や鉄格子の残骸と共に鉄戸に後頭部を強打。
気を失うお姫様が最後に見たのは月光を背に巨大な黒い筒状の何かを担いだ全身黒づくめの男でした。
「ターゲット発見」
小説家になろうでは初めての作品になります。至らないところが多いと思いますが、楽しんでいただければ幸いです。