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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第二章 新大陸編
83/101

83:共同作業

「僕の魔法が破られるなんて……」

 息巻いて出てきたルピアがちょっと焦っている。確かに今まで見た中でルピアの魔法を破った奴はいない。同じ第一階級のマキアイアでさえも。

「蛇族は魔法に耐性がある。特に先祖返りは強いのだ。この体を選んで正解であったな」

 蛇顔が不敵に笑った……ように見えた。実際は舌がちろちろっと動いただけだが。

「二人で一人か。ならば一対一とかわらぬな。貴殿の墓標に刻む名を聞いておこう」

「ルピア・ヒャルト・デザール・コモイオ七世。墓を建ててもらう気は無いけど」

 あのぉ、時代劇のような言葉にルピアも平然と答えてらっしゃいますが、蛇は斧を構えてるぞ。

「ほう、それはよい事を聞いた。デザールの猫王だけは生かしておく必要は無いと女王様も仰っていた。遠慮なく行かせてもらおう」

 完全に魔方陣の捕縛から逃れたスレカはルピアに狙いを定めている。それはまさにこれから得物を飲み込む蛇に見える。

 いや、それより―――

「生かしておく必要が無い?」

 何だ、それ? 相手を殺さないヴァファムなのに、ルピアだけは例外って事か? 何なんだそれは?

 蛇の目に睨まれてもルピアは逃げなかった。

「ルピア、危ないから手を出すな。下がってろ」

「嫌だよ。相手が一緒でいいって言ってるんだから僕も戦う」

 馬鹿。魔法が効かない相手とどうやって戦う気だ。お前は体を使って戦うタイプじゃないじゃないか。

「今は元気だから大丈夫。カッコいいところマユカに見せるよ」

 そうこう言ってるうちに、スレカが動き出した。やはり私を置いて、ルピアに狙いを定めて斧を振りぬく。猫だけに身が軽く動体視力も優れているから、ルピアは軽々とよけている。だがルピアは素手だ。逃げるだけで反撃する事は出来無い。

 まあいい。これをタイマンと同じだと相手が言い切るのなら、こちらも遠慮なく行かせてもらう。

 さっきもやってた八の字を描くような連続の振りを、ルピアは上手にかわしている。そちらに集中しているスレカのやや横に回り、鞭で手首を狙う。上手く絡めとれれば、相手も素手になる。

 ばしっといい音がして、鞭が当たっても手を止める事は出来無い。連続で打ち付けつつ、ダメとわかっていても脇腹に蹴りも入れてみるが、やはりうねっとその部分が動いただけでダメージを与えられない。

 それでもルピアの方から再び私にスレカの意識を向ける事は出来た。

「伝説の戦士も、そのマスターも大した事は無いな。何故他の者が敗れたのかわからんぞ。どうせ数に任せてやったのであろう?」

 ムカーッ! じ、事実だけどさ。他の仲間が頑張ったからだけどさ。ちょっと負けず嫌いの私には今の言葉は効いたぞ!

「貴様、絶対に倒す!」

 思わず真っ向から正拳突きに行ったが、やはりガードに入った手首に吸収された。

 魔法も効かない、攻撃も吸収される、だがどこかに弱点はあるはずだ。冷静になれ、東雲麻友花。

 うねうね。体中が関節……攻撃を吸収される……。

「魔法が効かなくたって!」

 いつの間にかスレカの後ろに回っていたルピアがぴょんと身軽に飛び上がった。伸ばした爪ですばやくスレカの後頭部にざくっと一撃入れ、反撃を喰らう前に飛び退いた。

 おお~、猫! 今のはまさに猫パンチ! 体力が戻ったら結構身軽に動けるんだな、ルピア。じゃなくって!

 うむ。なんかルピアのおかげで攻略ポイントを見つけたかも!

「ほう、やるな」

 ちょっと痛かったみたいに、スレカが目を細めた。あ、血が出てる。

「殺す気で来るんだから、こっちだって多少は荒っぽい事してもいいだろ?」

 ルピアはカッコよく言い返してるけど、息が上がってるぞ。相当動いたもんな。

 では今度は私のターン。

「ルピア、少し離れろ。なんか勝機が見えた気がする」

「え?」

 スレカイア、見切った。勝てる! 後はあの斧だが……。

 ルピア、お前が私の思考を読んでいることを前提に考えるぞ。さっきみたいに魔法で一瞬でいいから止めろ。完全に効かなくてもいい。斧さえ取り上げれば勝てるのだ。

「……わかった!」

 時間稼ぎに、私から撃って出る。

 スレカが斧を八の字を描くように振って攻撃してきたのを真似して、私は鞭を振り回す。軽く先が斧に触れ、ぱし、ぱしと小気味よい音を立てる。まるで乱取り稽古のようだ。このスレカは他の幹部より身体的にも魔法耐性も優れているからか、その分スピードは無い。とはいえ、下っ端や普通の人間とは比べ物にならない。それでも今まで異常な速さの相手とやり合って来たからか、スローに思える。だからついて行ける。

 もういいか、ルピア?

「そろそろとどめを刺させてもらう!」

 片手で大きく斧を振り上げ、もう一方の手を広げてこちらに伸ばしたスレカ。その伸ばされた手に鞭を巻きつけたが、攻撃は止まらない。

 来い!

 視界の隅に光る模様が見えた気がした。

「むっ」

 ほんの一瞬だがスレカの斧が止まった

「効かぬ!」

 ややスピードを落としつつ、斧はそのまま振りぬかれた。私は避けない。

 一瞬の事だったろうが、スローモーションの様に感じた。私の頭上に広がった魔方陣を切り裂くように斧が下りてくる。その刃先をぎりぎりのタイミングで紙一重で躱し、そのまま渾身の力で振り抜いたスレカの後頭部が見えた瞬間、手刀で一撃。

 蛇男がつんのめった。

「今だ!」

 ぴょーんと高く飛び上がったルピアがその斧の柄に飛び乗った。よし、いいぞ! それでもスレカは斧を放さなかった。だが、横向けに地面についた斧は平べったい。それを私も踏みつけながら、拳で肩甲骨の辺りを思いきり突いた。一回、二回、三回。突き、突き、突きぃー!

「ぐぉっ!」

 よし、効いたな。やっと放した斧を、ルピアが素早く拾い上げて、たーっと静観している仲間の元に走った。

「ほい」

「ええっ? なんでアタシよぉ?」

 なぜか斧をゲンに渡して、また素早く走ってきたルピア。

 ゆらりとスレカが立ち上がった。

「ま、まだだ……」

 うん、わかってるけどさ。斧も無い、素早くも動けないお前には素手では負けん。攻略ポイントを見つけたからな。

「行くぞ、ルピア。二人で一人だろ?」

「うん!」

 体術もそこそこありそうだが、こちらは狙うところがわかっている。いくら蛇でも頭蓋骨、骨盤、肩甲骨、膝骨など、細かく可動しない部分は体をうねらせて避ける事は出来無い。わかってしまえば結構やりやすい相手だった。

 蹴ってきた足の膝を狙い、蹴り返しながら同時に顎を打つ。その隙にルピアは背後から肩甲骨と後頭部に猫パンチ。

 結構ボロボロになって来たスレカ。そろそろとどめと行きますか。

「マユカに痛い事したから、僕も!」

 ぜえぜえ言いながら、ルピアが爪を思いきり伸ばしてにやっと笑った。ゾンゲもたまにすごい事になるが、ルピアの手も熊手みたいになってる。

「成敗っ!」

 なんか時代劇風が感染ったみたいに、ルピアが蛇男の頭にざくっと一薙ぎ。同時に私も顎にアッパーを決めたので、ダブルで効いたみたいだ。

「初の共同作業だね、マユカ」

 ルピア、結婚式のケーキカットじゃないんだからな……ってか蛇を殴ったこの手を今すぐ洗いたい。

「む、無念……」

 ばったり倒れたスレカイア。蛇男、撃破!

「耳かき部隊!」

「は~い」

 念のため、今回出番の無かった五戦士と他の面々で、思いきり押さえつけて紫色の第一階級のオスは取り出されたっぽい。うん、見てない。蛇から更に虫が出るところなんて見たくも無い。

「「瓶ですっ!」」

 全く使い走りになっている鳥の双子がステレオで言いつつ瓶を持って走ってきた。こいつらもこの前まで上級幹部だったのになぁ……。

「マユカ、大丈夫? すごく顔腫れちゃってるわよ?」

 ミーアが濡らした布を持って来てくれて、ホッとすると痛いのを思い出した。あー、結構酷くやられたな。

「痛いけどすぐに治るだろう」

 私はそう言ったのに、ルピアに抱き寄せられた。

「もう。女の子なのに跡でも残ったら大変だぞ。ほら、早く治るおまじない」

 ルピアが私の頬にちゅっとキスしたのはその時だった。

 ……私は何で避けなかったんだろう? 普通にキスされたな。

 なんか、今日のルピアは結構カッコよかったかも?

 こうして、私とルピアの初の共同作業は幕を閉じた。


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