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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第二章 新大陸編
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81/101

81:蛇の男

 リシュルの嘘つきっ!

 そうそういないって言ってたくせに、どんだけいるだよ、先祖返り!

 思い起こせば、デザールの猫族の街でも結構な割合でいたような気がする。犬族や魚族、鳥族では見なかったのに。後で聞いたら、魔力の強い種族ほど先祖返りの確立が高いそうだ。そういや魔力が強いのは一番が猫で二番が蛇だったな。

 そんな事はどうでもいい。人懐っこいシン青年で慣れて、少しは免疫が出来ていたおかげで悲鳴は上げなかったとはいえ、この馬鹿でっかい蛇さんからは、恐ろしい程の殺気を感じる。まさにこれから獲物を喰らわんとする大蛇のようだ。そんでもって私はカエルかひよこの気分。く、喰われそうで怖いっ!

「斧を見ても眉一つ動かさんとは。流石は伝説の戦士。肝が据わっておる」

 ……なんかこの鉄仮面のせいで誤解されてるし。内心めちゃビビッてますけど? 主に武器にではなくてその顔に。

「女戦士殿、お手合わせ願おう」

 早速構えたスレカ。むう、気の早い奴め。

「待て、ここはオレ達で!」

 私の前にグイルとゾンゲが出たところに、ぶん、と音を立てて斧が横薙ぎに振られた。軽く二人が躱せたところをみると、牽制だったのだろう。

「雑魚は下がっておれ。俺はまずこの女と勝負がしたいのだ。お前達はその後で相手してやる」

「雑魚だと……!」

 ワンコ青年と豹男は毛を逆立てて怒っているが、第一階級相手だ。彼等が決して雑魚などでは無い事を私はよくわかっている。しかし多分、束になってかかっても同じだ。マキアの時に学習したではないか。

「よし。スレカイア、私と一対一でやろう。皆離れていろ」

「でもマユカ! 百人以上を一人で倒す相手だぞ」

 わかっている、グイル。だからだ。出来るだけ犠牲は払いたくないのだ。わかってくれ、皆。私があっけなくやられたら、どうか後を頼んだぞ。

「マユカに任せよう。僕も防御するから」

 私の考えを読んだルピアが他の仲間を下がらせてくれた。ちょっとずるいが、ルピアにはいざって時に期待はしている。

 遠巻きに仲間達が見守る中、村の広場で対峙した私と蛇男。

 斧を持った手と素手の手を斜めにずらして攻防一体の構えを見せるスレカ。対する私は突っ張り棒を六尺サイズに伸ばして八相の構えだ。

 あの斧は小さいとはいえ持ってる奴の力が強そうだし、こんな軽いスチールの棒など当ったら確実に曲がるか折れるな……と、斧を見ている分にはいい。しかし……視線を顔に上げると、ひろひろ~と二股の舌が。

 ダメもとで一応お願いしてみる。

「スレカイアさん。一つお願いしていいだろうか? 顔を隠しておいて欲しい。出来れば舌も出さないで」

「何故?」

「その顔、怖いから」

「……面妖な事を」

 当たり前だがスレカは顔色一つ変えずに、ちろろっと舌が動いただけだった。微妙に鼻で笑われた気がしないでもない。

「このままでよいな?」

「うっ……」

 蛇男は再び構えなおした。あー、やっぱり却下か。

 そこで私は思い直した。これはきっと大女王の元に行くまでの試練の一つなのだと。

『苦手なものは一度勝てば克服出来る』

 柔道の師匠が以前言っていた。右の脇が開く癖があった私は、自分より小さい相手にはすぐに懐に入られるて重心がぶれ、足技に持ち込まれる欠点があった。だから小さい相手は苦手だったのに、一度こちらから綺麗に足技を決めてからは苦手意識は無くなった。それと同じで、蛇を倒す事が出来たなら、過去の嫌な思い出も消せるかもしれない。

 苦手なものも乗り越えなければ! そう思うと気合が入る。

「なんか……違う気がしなくもないけど」

 ルピアが勝手に思考を読んで向こうで呆れているが、私は真剣なのだぞ。

「参る!」

 まずスレカが動いた。右手で斧を大きく振りかぶり、左手は掌を開いてこちらに真っ直ぐに伸ばして正面から来る。この構えはバランスをとるため、もしくは防御も兼ねているのだろう。様子見かもしれないが動きはそう早く無い。

 伸ばされた素手の方に突くように棒を出すと、斧が振り下ろされた。斧の柄はこちらの棒より短いとはいえ、背が高く手足の長い相手だ。思ったより届いてくる! 紙一重で私が躱すと、スレカはすかさず向きを変えて構えなおした。

 勢い余って振り抜かなかったところをみると、そう力は入っていなかったようだ。やはり様子見か。一見正攻法で来るタイプのようでも、最上位の第一階級だ。どんな特殊な攻撃をしてくるかはわからないから気を抜けない。

 私も打って出る。下段から斧の持ち手を凪ぐように斜めに振り上げ、躱されればすかざず突きに切り替えて連続の攻め。狙いは確かな筈なのに一向に攻撃が当らない。

 こいつもアレか? ネウルレアに憑かれていたスイ君と同じで気の膜を纏っているのか? 違う、あの感じじゃない。多分ゆっくり動いているように見えてすばやく体を動かしているのだ。こちらは止まる事無く動き続けるしかない。

 一旦後ろに飛んで距離を取る。こちらの長い得物は間合いが無いと攻められないのが欠点だ。

「ほう。流石だな、普通の奴とは動きが全く違う」

 スレカも離れ、同じく間合いを取った。ううっ、舌、相変わらずちろちろしてるな。ウロコがテラッて光ってるし……。

 だが一つわかった。戦ってる間はその蛇顔を意識しないで済む。精神的には結構いけそうな気がするかも。

「こちらもそう手を抜いては失礼だな」

 斧の柄をくるんと回転させ、肩に担ぐような格好で構えたスレカ。へぇ、先程のはやはり手を抜いていたのか。

「では行くぞ」

 何かぞっとするようなじっとりとした気配を感じた。肩に担いでいた斧が、奴がそう近づいたでもないのに、襲って来たのは次の瞬間だ。

「何っ!」

 首元を狙ってきた斧は寸でで身を反らして躱し、ブリッジの形になって何とか手首を足で蹴り上げたが、太い筋肉質の腕の感触はゴムのようだった。勢い余って尻餅をついたものの、スレカが幸い襲ってこなかったので、素早く立ち上がる事が出来た。

「ふん、これも躱すか」

 怖っ! あれ喰らってたら首ちょんぱになる所だったでは無いか! コイツ本気で殺す気だ!

 何だ、今のは。腕が伸びる? いや、まさかそんな事は。

 間を置いてもダメならいっそ懐に入ったほうがいいかもしれない。奴はまた肩に斧を担いでいる。脇ががら空きだ。

 すばやく突っ張り棒を一番短く戻す。これで斧には到底及ばないが強度は稼げる。棒術から剣道に切り替えだ。

 待ち構えているだけかもしれないが、動かない相手より先に攻め込む。先手必勝! 中段から胴を狙う。

「はっ!」

 デカい標的なのにやはり当らない。スレカは動いていないのに。何故だ? だが考えてる間は無い。振り下ろされた斧を横から叩き、避けながら腕に小手を決める。

「ふっ」

 かなりの力を込めた一撃だった。それでもスレカは余裕の笑みを漏らして逃げもせず、確実に攻撃を受けたくせに斧を放しもしなかった。

 それよりも……何だ、さっきの。まるで攻撃の力を吸収するように、手首が波打ったかに見えた。胴もそうだ。確実に当ったと見えたのに、動きもせずに体のその部分だけが躱したように。

 斧が斜め上から普通に襲って来た。速度はあっても他の幹部ほどじゃない。私は棒の持ちて側の短いほうで肘の辺りを止めたはずなのに、何故か斧は止まらずにくにゅんとそのまま襲って来た。勢いは削いだものの、腰の辺りに斧がかすった。

「くっ!」

 ずんと重い衝撃があったが、鎧のおかげで怪我はしなかった。

 ってか、まただ。ありえない方向に手が曲がったとしか思えない攻撃だったぞ?

 その答えを第三者として見ていたルピアが叫んだ。

「マユカ! そいつ、こっちから見てたら常にうねうねしてる! ひょっとしなくても蛇みたいに体中が関節なのかも!」

「え?」

 うねうね……蛇みたいって、蛇そのものじゃんか! まさか、顔だけじゃなくて体中全部蛇っ!?

「ほう、見抜くとは」

 わざと私に見える様に身をくねらせたスレカレア。

 やっぱりキモーイ! やだよ、こんなの~~!

「さて、女戦士殿、次はどのように戦ってくれるのかな? もう少し楽しませてくれないと退屈だぞ」

 スレカイア―――やはり第一階級は普通じゃ無い。

 私は勝てるのだろうか、こんな奴に。


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