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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第二章 新大陸編
77/101

77:攻撃無効

 見た目は小さな美少女のネウルレアは、今までの役付きとは全く違った。

 動きはそう速くは無い。とはいえ、常人に比べれば相当な速さでも、今まで戦ってきた相手には目に見えないほどのスピードを持っていた者もいる。それと比べれば遅い方だ。

 また、先程まで戦っていたコシノやトミノ、ルミノなどの鳥族のように予備動作もなくジャンプしたり、コモナやマキアのようにトリッキーな動きをするでもない。武器も至ってシンプル。まさに肉体を使った真正面からの戦闘スタイルは、キックボクシングに近いかもしれない。

 左手のみに装着した刺つきナックルを利用したパンチとたまに蹴り。見ていてとてもわかりやすい戦い方。

 ふわりと短いスカートが舞うように翻り、白いペチコートのフリルと細い腿がちらちら見える。幼げで清楚な感じがするだけに、なかなかに刺激的な眺めだ。横を見るとルピアが食い入るように見ている。

「このスケベ」

「み、見て、ない」

 ルピアは否定しているが、あの格好が狙いだとしたら見事にはまっているな。ひょっとしてあのスカートはやる気を無くさせる計算?

 だが本人曰く……。

「あいつ男だそうだぞ。スカートの中身はあまり見たくないと思わんか?」

「うっ……!」

 猫王様は現実に引き戻された模様。頼むからそれ以上捲れないでくれと祈る。違う意味で男達が戦意を喪失しそうだ。まあオネェもいることだし大丈夫かな?

 流石にこういう実戦格闘に慣れているグイルとゲンは刺パンチを上手くかわしている。だが的が小さいのもあるのか、何故か味方の攻撃が全く当たらない。そう速くかわしているようにも見えないのにだ。

「くそっ、すばしっこいな」

 グイルが蹴りにいくと見せかけて、脇からパンチに行った。よし、いい軌道と思いきや……まただ。またするっと拳が空を切った。

「ちょっとワンちゃん、見た目で手加減してるんじゃないわよぉ」

 そうくねっと言いつつ、オネェのゲンのぶっとい腕が容赦なく超高速でジャブを繰り出したが、これも一撃も当たらない。正確に首を狙った回し蹴りも当らなかった。隙を見てネウルがゲンのボディにパンチをこれも連続で繰り出し、ついに一撃入った。

「きゃん!」

 幸い刺つきの方では無い拳だったが、背が小さい分下から抉るように入ったパンチは効いたようだ。

「お前も人の事言えないだろ!」

 グイルが文句を言っているがそれどころではない。ボクサーのようにリズミカルに小刻みに飛び跳ね続けるネウルはまったく動きを止め無い。そう力があるようにも見え無いが、数を撃つ間に今度はグイルにも一撃横腹に入った。

「ぐはっ」

 わざとなのか、またも素手の方の拳。

 一旦、双方下がって間合いを取る。

「細っこいチビだがすごく重いパンチだ」

「結構効くわねぇ」

 おかしい。どうみても二対一でグイル達のほうが多く数を打ってる。しかもここから見ていてもどれも正確な狙いだった。なのに一撃も当たらないとは。

「素手でなくてもいいんだぜ? それに全員で来なよ。その方がこっちも思う存分やれるしな」

 挑発に乗るな。ここで長物を振り回すのは得策ではない。小さな相手に人数をかけても相討ちが怖い。流石にその辺はグイル達もわかっているようで安心したが。

 あー、なんかうずうずするな。私もこういう真っ向勝負タイプとやりたいな。いかにチビさんでも、私は強い相手には遠慮しないぞ。

 思わず行きかけたが、一歩踏み出しただけで足がずきりと痛んだ。くう、まだこれではマトモに戦えないか? いや、それでも……。

「私も出る。マユカは動くな」

 ぽんと私の肩に手を置いたのはリシュルだった。

「わかった。頼む」

「了解」

 うーん、監督をしろとは言われたが、なんか自分でもすごくエラそうな気がする。ゴメンな、口だけで。

 リシュルが三節昆を置いて一歩踏み出した。元々は中国拳法に近い体術を使うリシュルは素手のほうが強い。同族だし多分相性はいいと思うのだ。

 また最初と同じく真っ向からの殴り合いになって……とはいえ、どちらもかわすばかりで当たりはしていないが……の現場へリシュルは、挨拶代わりに顔面に向けて飛び蹴りで入っていった。わあ、大人しそうなくせに大胆。

「おおっと」

 そう大きく逃げたように見えなかったが、やはりそれも躱され、待ち構えていたグイルのパンチが今度こそまともに腹に当たる……と思いきや、その拳はするりと軌道を変えた。

 にゅるん、まさにそんな感じだった。

 何だ、今のは?

「マユカ、アイツ、膜がある」

 ルピアが難しい顔で言った。まだ本調子では無いみたいでも、随分と滑らかに言葉が出るようになったみたいだ。とはいえ、意味がわからない。

「膜?」

「空気の、流れ。攻撃を滑らせてる」

「滑らせる……」

 確かに、今までのグイルやゲンの攻撃も狙いはかなり正確だった。なのに当たらないのはおかしいのだ。かすりもしないなんて事はありえない。

「魔法か?」

「防御魔法、近い、でもちょっと違う。蛇族、だから?」

「にゅるんと……うん、なんかイメージは出来るな」

 流石に小さな相手に大きな男三人掛かりは動き難いのか、一旦グイルが下がってきた。

「マユカ、なんかおかしいぞアイツ。全然攻撃が当たらない」

「なんか知らんが、奴の周りには力の皮膜があるんだそうだ」

 これって、何とかしないとマズくないか?

 相変わらずの混戦が続いている。こちらもうねっとした蛇の動きで、リシュルが足を払いながら、流れるように攻撃を繰り返しているがやはり滑る。それでもグイルやゲンの直線的な動きよりはややネウルを翻弄しているように見える。一度も止まらなかったネウルの足が止まった。

 一瞬巻きつくようにリシュルの手がネウルの首に回った。それをするりと大きく体を反らせて抜け出した隙を見て、ゲンが思いきりよく打ち込んで行った。

「そろそろいいよなっ!」

 素早くしゃがみ込んだネウル。右手で軽くゲンのパンチを止めておいて、左のナックルのほうの腕が高速でアッパーに来る!

「ぐっ!」

 ぼきっと音がした気がする。

 流石にゲンは素早く腕で防御して、顎には当らなかったものの、赤いものが飛び散るのが見えた。

「ゲン!」

 よろけて倒れたゲンは腕の骨がいったかもしれない。これが怖いのだ、ナックルダスターは。表面だけの怪我で済まない。指に填める部分も刺も金属製だ。かなりのダメージを受けただろう。

 すかさずグイルが走ったが、このままでは多分皆同じ目に遭う。

 攻撃を滑らせる……打撃攻撃が効かない……魔法ではない。

 先程、一瞬だがリシュルは捕まえられた。ここに勝機が無いだろうか。

「ルピア、ほんの一瞬でいい。奴の動きを止められるか?」

「うん」

 本当はあまりルピアに魔法を使わせたくない。また命を削ることになるかもしれないから。だが、頼む。

 よし、攻略方法を思いついた。

 私が行く。これは私にしか出来無い。

「リシュル、グイル、下がれ」

「でも……!」

 飛び退いた二人をネウルは追わなかった。余裕だな、白蛇。

 足が痛むが、とりあえず近くまで行くと、またぴょんぴょんとボクシングのフットワークのように動き出した。

「俺は女相手でも手加減しないぜ?」

 勿論だ。手加減などしてもらっては困る。

 そして私はその場に片膝をついて座った。

「何のつもりだ? やる気あんのか?」

「ああ。お前など座ったままで充分だ」

 来い、白蛇。


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