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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第二章 新大陸編
74/101

74:思わぬ深手

 変身される前に打って出る。

 マッチョ三人と女子供と優男という軽量化したメンバーに交代する間、私がなんとか繋がねば。

 二人を纏めて相手だ。

 私がやっていた棒術は武道の型に則っており、日本の武道は本来一対一を想定し、かつ相手も型通りに動いてくる事が暗黙の了解。だが実戦で違う種類の武器、多人数を相手となると、綺麗事も言っていられない。こちらも臨機応変に動かねばならない。

 隙を見せないように一気にコシノとトミノの間に割って入る。

「来い、お前らなど私一人で充分だ」

 ……勿論無理だけど。煽りに乗ってくれ。特にトミノ。

「へえ、一人で相手してくれるんだってさ、コシノ」

「甘く見ない事ですよ、トミノ」

 コシノは流石に冷静だった。それでも鏡に映したように同時に掛かって来る。

 突っ張り棒をバトンのように大きく回転させる。以前何かで見た、インドや中国の棒術の演技のように常に右側左側と交互に動かしながら回す。よく映画で見て派手で無駄な動きだなとその時は思っていたが、攻守を兼ね備えた動きだ。効果は絶大だった。

「わっ!」

 手持ちのくないはナイフと同じ。すばやい動きで突っ込んできた一人の一本を弾き飛ばすことに成功した。どちらだ? まだ見た目で区別はつかないが多分トミノの方。

 相手も馬鹿ではない。二手に別れ、すばやい動きで一度に数本のくないを投げてきた。片方は防げたが、もう片方は……。

「よっ」

 ぱしっと乾いた音がして、くないが地面に叩きつけられた。カラカラと坂道を転げ落ちていく。

「ふふん、アタシの視力を舐めちゃ駄目よ」

 ミーアが鞭でくないを叩き落したようだ。

「助かった!」

 無事交代組と合流できたのはいいが、これで私も派手に棒を振り回す事は出来無い。ここは坂道というだけでなく狭い。人が密集してしまうと相討ちが怖くて大きな動きが出来無いのが痛い。

 しかし、攻めてきた勢いでまた私とミーアは上手に回ることが出来た。坂の下のリシュル、イーアとで挟む形だ。

 背中を合わせた双子はまた先と同じように一人につき二人と対峙している。

 先程大盤振る舞いで投げていたからか、どうやら飛び道具の小くないは尽きたらしい。残る武器はこちらを向いた一人が両手に持っている二本と、リシュル達のほうを向いている一人の一本。

 それでも鳥になられたら尖った爪と嘴という武器がある。

 ミーアに言われたように本体を狙うのでなく羽根を狙う。息を合わせてミーアと共に打って出た。

 私が喉元をめがけて突きに行く。躱すのは想定のうちだ。攻め込んで来た所を棒で止めながら足で羽根を狙う。だが、今度は高くジャンプして逃れられた。しまった、こいつは予備動作もなく飛び上がれるんだ!

 だが同じく高くジャンプしたミーアの鞭が翻り、正確に片方の羽根を打ちつけた。はらはらと羽根が舞う。

 かなり羽根の抜け落ちた片腕を抑えて、鳥男は膝をついて着地した。

「くっ!」

「アタシだって少しは飛べるんだから」

 おお、流石は同じ鳥族。と、感心している場合では無いので、私も間断なく攻め続ける。やや動きの遅くなった気がする相手だが、まだ充分に早い。足技も使いながら両のくないと同時に襲ってくる。一言も口に出さず攻めてくる様は、敵ながら真剣そのもので潔いとすら思えた。

 私が棒で足を払い、ミーアの鞭。舞い散る羽根。気の毒だがもう飛べまい。

 一人に一生懸命になっていて、もう一人の存在を私達はすっかり忘れていた。時折視界の隅でリシュルの三節昆が動くのは目に見えてはいたが……。

「しまった!」

 リシュルの声で気がつくと、頭の上でばさばさと音が聞えた。もう一人は獣化したみたいだ。

 急降下で襲ってくる嘴。ミーアが飛び上がって鞭を振るったが、素早く高度を上げてもう一度襲ってくる。それに気を取られた隙に、目の前が真っ白になるくらいの激痛が走った。もう一人がくないを放ったのだ。

「マユカ!」

 ミーアの声で太股を見ると、くないが深く刺さっていた。うわ、これは痛いな……

 立っていられなくなって思わず膝をついた。これ、抜いたら結構血が出そうだ。というか、自分の事ながら見なきゃ良かった。

「……大丈夫だ。早くコシノを……」

 幸いなことに、鳥は襲ってこなかった。

「イーア、良くやった!」

 リシュルの声とぎゃーぎゃーと鳥の鳴く声が聞える。

 イーアが流星錘を投げ、上手く捕まえたみたいだ。細い首に巻きついた糸から逃れるように飛ぼうとしている鳥。凧のようにその紐はがっちりとイーアの手に繋がってる。多分もう数秒で電撃で落とされるだろう。

 街灯の明かりも届かない上空でばちっと光がはじけたのが見えた。

 落ちて来た鳥。地面に叩きつけられたそれは人の姿に戻った。だが立てないようだ。

 先に引いたグイル達が走ってくるのが見える。

「トミノ!」

 もう一人の声が聞こえる。ってことはコシノが残ってるのか。

「よくも……」

「それは、こっちが言いたい」

 痛いよ。相当痛いって言うより熱い。太股に心臓が動いてきたみたいにドキドキするなぁ。多分表情は変わってないだろうが、今までで一番ヤバイかも。

 片膝を突いた形だが、私のこの顔だ。全然効いてないように思われてるんだろうか。リシュルの三節昆とミーアの鞭をすり抜けたコシノのくないが襲ってくる。何とか突っ張り棒で止めたものの、次の一撃が来る。

 もう痛いなんて言ってられないので、棒を捨て至近距離に近づいた腕と肘を掴んだ。そのまま一教返し。合気道の技で片膝を突いた形で相手を投げる技だ。くるりと綺麗に決まり、背中からコシノは落ちたが、軽いためそう効いた様には思えない。太股に力が入ったのでずきりと痛んだ。

 そこへミーアの鞭が飛んだ。最後のくないも弾き飛ばされたコシノ。

「うっ!」

 とどめはリシュルが決めてくれた。もうトミノの方は念入りにイーアが電撃を食らわして、グイル達に捕まっている。

 ……終わった、そう思った瞬間にまた痛いのを思い出した。

 ああ、なんか目が霞んで来た。私、なんかカッコ悪いな……。

「マユカ、大丈夫か?」

「はやく医者に……」

 皆が来てくれたのに、悪いが立てそうに無い。これ抜かなきゃ駄目だろうけど、抜くとやばそうな気がする。

 それより早く気を失ってるコシノとトミノの虫を……それに小女王のところに今すぐに……。

「にゃ、にゃにゃっ!」

 一応ルピアがその辺はゾンゲ経由で耳かき部隊に伝えてくれたようで、安心できた。

「マユカは表情が変わってないから気がつかなかったが、これは抜くと大量出血する恐れがあるぞ」

「すまん、早く気がついてやれなくて」

 リシュルとグイルが私の足を見て言った。うん、自分の事だからそれは良くわかっている。二人の幹部をやっと倒せたからか、思い出してズキズキ痛い。気がついていてもどうにもならんがな。

 医療班が来てくれても、予想外に私が深手だと気がついて手を出しかねている。この屋外だからな。せめて病院だったら何とかなったのかもしれないが。思いっきりデカい血管直撃してるし。でもずっとこれ刺したままもな……。

「にゃーっ、うにゃっ!」

 ルピアも走って来てくれたけど、ごめんな、無様にやられてしまった。

 ぎゅっと抱きしめられて驚いたが、ルピアが震えてる。大丈夫だ、死にはしない。痛いのは私だから、お前が泣く事は無いのに。

「早く女王のところへ行かないといけないが、すまん、ちょっと……」

「ま、ゆ……」

 え? 今……?

 一生懸命泣きながら喋ろうとしているルピアの顔を見て、一瞬痛いのも吹き飛んだ。

「泣くな。死んでないんだし」

「で……も」

 やっぱりだ。ルピアは猫じゃなく、人の言葉を喋ってる。

 そっと白い手が傷に伸びてきた。

「かわ、て、あげ……くて、ご、め」

「いい。代わってくれなくて良かった。前に言ったはずだ。お前が痛いのを見るのは嫌だって」

 いつもみたいに身代わりになってくれないほうがいい。自分が痛い方がまだ。これがルピアに刺さってなくて良かった……。

 治癒魔法は苦手だと言っていたルピアが、一生懸命何とかしようとしてくれているのがわかる。仄かに光る手が刺さったままのくないの周りを回ると、小さないつもの魔法の印が現れた。

「ちょ……たい、けど」

 思いきり引き抜かれて、一瞬気が遠くなったが、血が吹き出す事は無かった。防御陣で出血を止めたようだ。

 慌てて治癒魔法を使う医師が布をきつく巻きつけたまでは良く覚えている。そして微笑んだルピアにふわりと抱き上げられたのも。


 その後しばらくの記憶は……無い。


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