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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第二章 新大陸編
73/101

73:二羽の鳥

 刑事スキャンするまでもない。どう見ても同じ顔だ。背丈も、服装まで同じ。

 忍者っぽい奴だから分身の術……ではないな。

 現実的に考えたら宿主がよく似た一卵性の双子なのだろう。中身はどうなんだろうか? ヴァファムは卵から生まれるから双子はあり得ない……というか、そもそも皆兄弟だし、それでも個性的な感性の持ち主だ。いや、待て? 鳥や蛇だって卵から生まれるが、鳥族などは卵生って事はないよな。

「にゃ、にゃにゃんにゃごぅ、みー」

「マユカ、今はそんな事どうでもいいと思うぞ、だそうだ」

 うむ。そうだった。あまりの驚きに考えこんでしまった。だが、もし獣化、戦闘能力まで一緒だとすると、かなりヤバイ状況じゃないか。

「どうします? ここで今すぐ戦いますか? それとももう少し広い所にでも行きましょうか。私達はどちらでも構いませんよ」

 余裕だな、コシノレア。

「さっさとやっちまおうよ。いいじゃん、ここで。あ、俺はトミノレア。よろしくね、短い間だけど」

 もう一人がぺこりとお辞儀をした。既に手にはコシノと同じくない。

 コシノさんにトミノさん。日本のどこの町内のお隣さんだみたいな名前だな。見た目はそっくりでも性格は随分と違うようだ。お上品な方がコシノ、気の短そうな方がトミノだな。

 そっと周りを窺うと、グイル、ゾンゲ、ゲンがいい感じの位置でそれぞれ構えている。最初からミーア、リシュル、イーアは交代で二番手で出てくるように打ち合わせしてあるのでルピア達と共に少し下がった場所にいる。

 この急勾配の道、幅は四メートル程か。片側は、崖とまではいかないがかなり急な斜面になっている。背の低い木が植わっているのと、気休め程度の低い柵があるだけだ。足場は悪いが仕方あるまい。

「私は東雲麻友花。お前らを倒し、小女王のところへ案内してもらうぞ」

 六尺ほどに伸ばした突っ張り棒を回し、脇で中段に構える。

「勿論案内致しますよ。ただし……キオシネイア様の新しい体として!」

 しゅっと小くないが飛んできた。投げたのはコシノの方。

 これが合図だった。戦闘開始だ。

 一番前にいたので、まず私が突きに行く。ただでさえ戦いにくい坂道、しかも優位な上手かみてを取られている。そしてフィールドが細長い。こいつらは身が軽い。飛んで躱してくれた所を、他の者が攻められるように。

 案の定軽く躱され、大き目のくないを両手に二刀流のナイフのように持った状態で二人が交互に襲ってくる。街頭に照らされる緑の羽根と相まって、それは二匹のカマキリのようにも見えた。

 この状態ならこちらの方が得物が長い。薙ぎ払い、旋回でかわし、もうどちらかともわからなくなった一人に絞ってすね払いに行く。

「おおっと!」

 よし、相手は案の定大きく飛び上がって躱す。

 一人が頭上を越え、私の後ろまで飛んで逃れたが、これでやりやすくなった。後ろは任せた、グイル、ゾンゲ、ゲン。

 丁度着地したところを、今度はグイルの刺叉に突かれ、ひらりひらりと躱すのが見える。だが余所見している間は無い。もう一人上手にいる方は間断なく襲ってくる。

 この前もそうだったが、コイツはスロースタターのようだ。まだ本気を出していないのか動きはまだ目で充分追える。

 こちらもくないを避け、棒で突きを狙いつつ同時に足技も入れながら攻めるが、相手の身が軽いのと、こちらの回し蹴りの軸足が坂道でイマイチ不安定なのが響き、なかなかダメージを与えられない。

 早くなっていく攻撃の手。それと同時に殺気が漲ってきた。

 ひらりと飛んだ鳥男の手から飛んできた小くない。それを弾く隙に、また二人に合流されてしまった。

「ひらひらと……」

 同じ第二階級のルミノのときもそうだったが、鳥族は本当に身が軽い。軽すぎて相手の力を利用する合気道の技も柔道技も効かないだろう。そもそも組みに行けない。

 二人を相手に、こちらは現在四人。卑怯? もうそうとも思えない。

 先程までの小競り合いで一つわかった事は、両手にくないを持っているがゆえ、小さいほうを投げるときはすばやい動きで一本を口に咥え、空いた手で投げてくる。その隙を突けないだろうか。

 坂道の私が最上手、下手しもてにグイル、ゾンゲ、ゲン。その丁度中央に同じ顔の二人が背中をぴたりと合わせるように立っている。本当に気持ちが悪いほど似ている。私の方を向いているのはコシノかトミノかどちらだ。

 じり、と間合いを計る。

 あまり距離が開きすぎるとこいつらは飛び道具を使ってくる。

 まだ手には大くない。胸前で腕を斜めにクロスする形で構え、相手もこちらの出方を窺っている。目はほとんど動いていない。

 ゾンゲが爪を最大に伸ばして接近戦の構えだ。じりじりと少しづつグイルとゾンゲは横にずれて、四人で囲む形になった。

 目が合い、同じ長物のグイルと私が同時に突きに踏み込む。防御の姿勢のまま、予備動作も無く二人が同時に飛び上がった。

「なにっ!」

 斜めからであったが、同時に突きに出た私とグイルの武器は空を切り、そのまま勢い余って互いを傷付けるところだった。咄嗟に引いた、そこに隙が出来てしまった。

 飛び上がったまま二人は降りてこない。

「上よっ!」

 ゲンの声にはっとした時には、二羽の鳥が頭の上を飛びまわっていた。くそっ、獣化したか! しかもトミノも化けるのか!

 鳥の姿のままの鋭い爪が上から襲って来た。ばさばさと風を切る音。すんでで棒を振り回して逃れたが、すばやい鳥に攻撃が当たらない。

 がぁ! と声がしたかと思うと、思いきりジャンプしたゾンゲが一羽を熊手のような爪で薙ぎ払った。

「ぎいっ!」

 鳥が声をあげたが、豹の爪はわずかに掠めただけだったようだ。それでも緑の羽根がはらはらと降ってきた。良くやった、ゾンゲ! もうこうなったら人同士の戦いで無く野生の王国って感じだな。

 化けるのも早ければ、戻るのも早い。空に浮いたままだった鳥男達はすばやく人型に戻り、くないを上から投げてきた。それも何本も!

 何本かかわし、棒を回転させて弾いたが一本がマントを突き破った。

「マユカ!」

「当たってない! 気をつけろ!」

 一度着地したコシノとトミノはこちらが攻撃する間もなく再び高くジャンプし、くないを手裏剣として投げてくる。

「うわっ!」

 かわし損ねたゾンゲが一撃受けた。直撃はしていない様だが、視界の端で街灯の光りに毛が舞うのが見えた。

 くそ、これを何度もやられたら!

 かん、といい音がした。ゲンちゃんがゾンゲの前で広げているのはマキアイアの鉄扇。広げてくないを弾き飛ばしたみたいだ。そういえば回収してなかった。ゲンがまだ持ってたんだな。

「ふふん、第二階級か知らないけど、こちとらこないだまでトップ張ってた虫ちゃんと一心同体だったのよぉ。それより下っ端には負けないわよ」

 おお、なんか知らんがゲンちゃん、頼もしい。

「アタシが防御するから、ワンちゃん猫ちゃんで攻めなさい!」

「頼む!」

 よし、一人はこのマッチョ三人組に任せておいて良さそうだな。なかなか連携が取れてる。

 着地したところを袈裟掛けに払いに行く。ひらりと後ろに躱した一人がもう一人にぶつかった。

「おい!」

「すまん」

 チャンス!

 棒で駄目なら蹴りだ。肩口に回し蹴りが決まり、軽い体が飛んだ。

 倒れこそしなかったものの、かなり効いたみたいで、鳥男はふらついている。

「やりましたね……!」

 この喋り方はコシノの方か。

 もう一人も誰かの攻撃を受けたらしく、少し離れた所でよろめいていた。

「くそ……」

「やるな」

 だが、やはりこんなもので倒せるほど甘い相手ではない。

 国境の時もそうだったよう、一撃受けてからが本気になるタイプだった。

 ものすごい気迫で、見えないほどの速さで二人が動き始めた。

「きゃっ!」

 何が起きたのかもわからないほどの間に、攻撃をうけたのかゲンの鉄扇が飛んだ。

 その横ではグイルの刺叉も。

 風のような……まさにそんな感じだ。

 気がつくとまた最上手を取られ、見下される形になっていた。

「キオシネイア様をお守りする」

 もう一度獣化する気配を見せた二人。その時、ミーアの声が響いた。

「マユカ! 羽根を狙って! 羽根が無ければ鳥に変わっても飛べない!」

 そうか、彼女も鳥族だ。弱点はわかっているか。

「ちっ、余計なことを」

 よし、いける。コイツ等を倒せるかも。

「ミーア、イーア、リシュル、交代だ!」

 こうなったら総力戦だ。

 気の毒だが毟らせてもらうぞ、その羽根。コシノレア、トミノレア。


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