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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第二章 新大陸編
62/101

62:新たな仲間

 ぐったりと倒れたルピアは動かない。

「ルピア、ルピアっ!」

 慌てて駆け寄って抱き起こすと、かろうじて息はしているものの、白い顔の瞼は青く透けるようで、いつにも増して弱っているように見えた。

 また魔力補給しないと……そう思ってルピアの唇に私が顔を近づけた瞬間にイーアの声に引き戻された。

「マユカ、今のうちにマキアの本体を何とかしないと」

 イーアが慌てているのも頷ける。また目を覚まされたら今までの苦労が水の泡だ。

 しかし、考えてみたらマキアイアは第一階級。小女王エルドナイアの本体も、耳孔や鼻腔に収まりきれず肺に寄生していた。どうやって取り出せばいいんだろうか。この場で取り出すことが出来るのかという心配がある。

 ヴァファムに一番詳しくて、寄生している場所を探り当てるのも上手いルピアが今伸びている。これは先にこっちを何とかしないといけないみたいだ。

「イーア、まだもう一回くらいビリビリは使えそうか?」

「うん、いける」

 チビさんもかなりフラフラしているところを無理させてすまない。だがマキアにはもう少しおねんねしていて欲しい。

 思いっきり遠慮なく、イーアが伸びてるマキアに電撃をかましている。宿主には気の毒とは思うものの、まああれだけ丈夫そうな体なので大丈夫だろう。

 それよりルピアだ。

「頑張ったな。すごかったぞルピア」

 もう躊躇いも無くキスできる。

 血の気の無い唇は乾いていて、ルピアはぐったりしたままだ。

「あれ?」

 何時もは一回で復活していて寝たふりをしていたりするのに、今日はそんな素振りも見せない。まだ青ざめた頬も元に戻ってない。ってか、息してるか?

「ルピア?」

 揺すってみても目も開けない。だらんと垂れた手に嫌な予感がした。

 さっき物凄い事やったもんな。まるで別人みたいに……

 胸の音を聴いてみたら微かに鼓動は聞える。それでも、今にも止まりそうな弱々しさで、また涙が出そうになった。

「ルピア、しっかりしろ、死ぬなっ!」

 もう一度キスする。うんとうんと長く。さあ、はやく補給を!

 それでもすぐに目を開けないから頭が真っ白になった。気がつくと胸に頭を思いきり抱きしめていた。柔らかい猫っ毛の感触がくすぐったくて、切なくて。

「ルピアの馬鹿――――っ!」

「ば、馬鹿……言うな……」

 気がつけば腕の中でルピアがもがいていた。

 何故か子猫になって。谷間とも呼べぬ胸でじたばたしている。

「え?」

「ち……違う意味で昇天しそうになった……」

 それはすまなかった。思いきり抱きしめていたから窒息でもしそうになっていたのだろうか。危うく私がとどめを刺すところだったな。

「いや、思ったよりあった胸の感触に、恥ずかしい事になりそうだったのでつい変身してしまった」

 恥ずかしい事……詳しくは聞きたくは無いが、微妙に子猫が腰砕けになっている。そうか、意外と私の胸はあったのか。じゃなくてっ! 一応二回目で目が覚めたという事か。ふふ~ん。

「うりゃっ」

「うにゃんっ!」

 腹いせに尻尾の付け根をぐりぐりしてやると、子猫はよたよたと逃げて行った。

 やっぱ馬鹿だ。でも……良かった、無事で。すごく強いところも見せてもらったし。見直したぞルピア。

 ―――と、暢気にやってる場合では無かった。

「マキアの本体は取り出せたか?」

 耳かき部隊に訊くと、誰もが首を振った。

「第一階級なのでしょう? 一体どれだけ大きなヴァファムがいるのかも見当もつかず、宿主を殺してしまうと大変なので……」

 そう返ってきただけ。

 そうだな。その心配があったのだ。幸い、余程イーアが頑張ったらしくまだマキアは起きていない。

「なあルピア、マキアの虫は取り出せないのだろうか?」

 子猫モードでメイドちゃんに抱っこされているルピアに尋ねると、わりと平然とした声が返って来た。

「ああ、それなら問題ない。ペペ、左耳にいるから耳かきしてやって」

 へ? 耳にいるんだ。ううーん、どんな虫が出てくるんだろう。うにょ~んとか長かったりしないよな?

「あのぉ……ルピア様? わたくしがですかぁ? 嫌ですねぇ……」

 言いつけられたメイドちゃんが泣きそうな顔をしている。耳かき部隊で一番上手で、知らぬ間に副隊長にされていたキジトラメイドちゃんはペペちゃんというのか。今更ながら初めて名前を知ったぞ。まあ嫌だわな、ゴツイオネェの耳かき……しかも叩きたおしたので頬が腫れて悲惨な顔になってるし。

「もう仕方ないなぁ。じゃあ僕がやる。僕も嫌だけど」

 ルピア、素直でいいんだけどさ、メイドに拒否されて受け入れちゃう王様ってあんたの国の力関係ってどうなってるんだろうかと問いたい。まあいいけど。

 人型に戻って、まだヨタヨタしつつも、愛用の耳かきを取り出すルピア。

「ったく、男が化粧など信じられん」

 ぶつくさ言いながらも、正座してゴツイ男の頭を膝に乗せて耳かきしてるのって……ルピアって意外と律儀で可愛い。

「いたいた」

 ルピアが少し嬉しそうな顔になった。そういうのは獲物をみつけた猫みたいだ。

「マユカ、ビンちょうだい」

 あまり近くで見たくは無いのに、ビンを持って行くと得意げに取り出した虫を私に見せてくれた……って、え?

「思ったよりちっちゃいな」

「うん、だって第一階級とはいえオスだから」

 予想外にも第一階級のオスは、第二階級の虫と変わらない大きさだった。だが今までのどの虫とも違う、キラキラと宝石のように光る紫の羽根は虫嫌いの私でも綺麗だとすら思えた。

「やはりヴァファムはメス優位なのだな」

「圧倒的にね。だからきっとこのマキアイアも女に憧れたんじゃないのかな? たぶん寄生されてたこの人は普通の人だと思うよ」

 なるほどな。女になりたかった虫か。どうみても寄生されていたこの男は鍛え抜かれた戦う身体だ。元の職業は何だろう。軍人か警察官? それともレスラーか? 気の毒に、こんなドギツイ化粧をされて、ピンクのヘソだしルックだ。目が覚めたら発狂するんじゃなかろうか。

「さ、約束だよ。この国の下っ端達全員に降伏するよう命令しろ」

 ビンに放り込んだマキア本体にルピアが命じると、きーんというあの高い音が響き渡った。マキアイアは約束は守るほうだったようだ。

「いい子だ」

 よっしゃ。これでまずはこの国だけでも解放できるぞ!

 一安心したところで、ルピアが立ち上がろうとしたところで、寄生されていた男が目を覚ました。

「ん……」

「大丈夫?」

 男は目を開けて、覗き込んでいたルピアの顔をしばらく見て、思わぬ行動に出た。

「にゃっ?!」

 逞しい腕がルピアの頭を引き寄せたかと思うといきなりの濃厚なキス。

 むちゅっとかぶちゅっとか音が聞えた気がする。

 ルピアが手をバタバタさせているので、私は慌てて引き剥がしに行った。

「きっ、貴様っ、何をするか! ルピアを放せっ!」

「やっと頭から虫が出て行って、目の前に超絶タイプのカワイコちゃんがいるんだもん。お目覚めにちゅうくらいしてくれてもいいじゃないのよん」

 哀れ、ルピアは本日二回目気を失うことになった。

 残念ながら元々男が好きな男だったようだ……。


「うげええぇ」

「やだぁん。ひどぉい」

 何度もうがいをして、それでも嫌そうにルピアがうげーと言い続けてる。

 そうですか。そもそも宿主もオネェ様だったのか……ここまでの幹部は外見と中身が一致しない者ばかりだったのに、珍しく趣味が一致していたらしいな。

「アタシはゲン。犬族だけどぉ、どこの国にも属さずに流しで戦争やってる所に行っては稼いでたの」

 つまりは傭兵なんだな。道理でいい身体をしているわけだ。オネェだけど。

 ミーア、リシュル、グイル、ゾンゲは只今治療中。このオネェのせいでは無いとはいえ、随分酷くやってくれたものだ。命に別状はなさそうで幸いだが、皆しばらく戦えそうに無い。

 さすがに私達だけでこの国の下っ端を全部取り出すのは無理だ。この議事堂にいた者をまず解放し、それからイラの町で数百人解放してから、方法を教えて自分達でやってもらう事にした。

「で、ゲンちゃんは私達の女王退治を手伝ってくれると言うのか?」

「そりゃねぇ、乗っ取られてたとはいえ、酷いことしちゃったしぃ。ホントにゴメンねぇ。気持ちは乙女だけどぉ、アタシ結構強いから役には立ててよ」

 乙女とか言われるとすごく引くが……確かに相当役には立ちそうだな。しかしこのキャラ何とかならんのか。男性陣が激しく引いているぞ。

「マユカっ、コイツやだ! 気持ち悪い!」

 特にルピアは涙目で拒否だ。

「まあそう言うな。非常に役に立ってくれそうだぞ」

「でもなんというか……いろんな意味で身の危険を感じるのだが」

 うん、まあすでに唇奪われたわけだしな。だがルピア、お前の貞操は私が守ってやるから安心しろ。

「マユカがそう言うなら……」

 私の考えを読んで、ルピアも渋々認めた。

 というわけで、しばらく休ませてやりたいミーア達に代わり、マキアイア改め流しの傭兵ゲンちゃんが仲間になった。オネェだけど。

 そうこうするうちに、治癒魔法でかなり回復したグイルが戻ってきて、難しい顔で私に報告した。

「ミーアとリシュルは念のため病院に連れて行った方がいいかもしれない」

 うーん、そうかそこまで酷かったか。ますますゲンちゃんは味方にしておいたほうが良いかもしれないな。

 あ、そうだ。病院といえば……。

「イーア、お兄さんに会いに行こうか」

「え? ホント?」


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