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鉄仮面な伝説の戦士は猫がお好き  作者: まりの
第一章 五種族の戦士編
31/101

31:薙刀VS流星錘

 流星錘は飛び道具に近い。

 分類上は以前戦ったユング様の三節昆と同種にされる振り回し系だが、紐が細く早く回すと見えない事、持ち手が棒状では無いので、何処から攻撃が来るか予測し難い分戦いにくい。

 武器の動きを止め、懐に入れれば何とかなるのだが……。

 動いているかもわからないルミノの手元からひゅん、ひゅんという高い音が響く。

 しかし暗い。こいつは鳥族らしいが夜目は利くのだろうか? 鳥目というが、鶏など家禽は特別で鳥目の鳥は案外少なく、一部を除いては昼間とそう変わらないらしい。フクロウなどよく見えるものは別格だ。

「ミーアって鳥目?」

 一応味方の鳥族に訊いてみる。

「ううん、普通? 昼間よりはやや落ちるけど」

 ミーアの返答。という事は奴も見えてるって事だな。

 考えている暇は無い。私はわりと相手の出方を見てから動くほうだが、今回は先手必勝で行こう。

 薙刀を中段に構え、すり足で一歩進む。まずは突き技で胴を狙う。

 きんっと硬い音がして刃が弾かれた。しかし相手は固い柄でなく紐だ。これは行けるかもしれない。八相に持ち替えて続けざまに脛から胴に流すが、ルミノにひらっと身軽にかわされた。

 重力を感じさせないほど軽い動き。

「へえ、全く無駄の無い動きをするね。その長い武器は厄介だな」

 ルミノが余裕の声で言う。こちらこそ同じセリフを返したい。

 私以外の他の面々もそれぞれ動いている。鳥男が下がった先にはユングの三節昆を持ったリシュルが待ち構えていた。

「ハァッ!」

 初めて使うとは思えぬ動きでリシュルが三節昆を振る。

「わあ、怖い怖い」

 だがこれも後ろにでも目がある様に身軽にかわすと、ルミノが流星錘を放った。

「えっ!?」

 全く予想外な方向で声が上がる。あまりの速さにどちらに向けて放たれたのかわからなかった錘は、リシュルでなくグレイの刺叉を持って機会を窺っていたグイルの方に向かっていたのだ。

 ひゅるるっと音を立てて太い柄に巻きついた紐に、グイルはあっけなく刺叉を回収されてしまった。

 おまけに紐で絡め取られた刺叉が空中を移動する際に、危うく当たりそうになったミーア、イーアが避けて、こちらの陣形は大きく崩された。これも狙いの内だとすれば、このルミノレアは身が軽いだけでなく状況判断も異常に早い。

「マズイな。一度にかかっても同士討ちもありえる」

 素手では無理だが、こちらも武器を持って戦うにはあまり混戦になるのは危ない。これだけ動きの早い奴だ。躱された勢いで同士討ちもありえる。

「リシュル、ミーア、イーアまず下がれ。先にグイルと私で様子を見る」

「了解」

 一応私も計算している。武器と素手の組み合わせを三組作ってみたのだ。ここにゾンゲがいないのが痛いものの、リシュルの三節昆とミーアの鞭は流星錘と同じく可変性の武器。この薙刀よりは相性が良さそうだ。誰かと交代した際、私が素手で出ればいい。

「一度に来てもいいのにさぁ」

 煽るようにルミノが悪態をつくのに、コモナが厳しく釘を刺す。

「ルミノ、甘く見ていると痛い目に遭いますよ」

 おお、コモナいい事言うな。

「でもどうせお前は助けになんか来ないだろ?」

「勿論。お一人で何とかなさい」

 ……コモナ、結構冷たいんだな。仲悪いのかコイツ等? それとも信頼してるからなのだろうか。まあどうでもいいけど。

「行くぞ!」

 鳥男がまたひゅんひゅんと紐を回し始めた。

 まず流星錘を止めたい。

 グイルに目で合図すると、私は今度は薙刀をあえて隙のある上段に構えて出た。狙って来い、胴を。

 ひゅっと風を切る音がした。早くてよくわからないが、微かに銀色の光が見え、狙い通り腹めがけて錘が飛んで来た事がわかった。そこで私は思い切って薙刀を斜に振り下ろした。

「わお!」

 錘を射ち落とすと、巻き取ってやろうと振り上げたがそれはすかざず紐を引かれて回収された。

 だが私とルミノがその駆け引きをしている間にグイルが上手く回りこんでいて、カウンターで横から飛び蹴りを命中させた。

「いってぇ!」

 ……どうでもいいが、いちいち出す声がウザいんだが? ルミノレア様。

 見た目も軽いが、中身も結構軽い感じなのかな?

「ねぇ、マユカ、軽い男って何?」

「お前のような男のことだ」

 戦闘中に緊張感の無い事を聞くなルピア。しかも勝手に頭読んで。コイツは軽いと言うより残念なのだったな。

 まあいい。真面目にやろう。ルピアのおかげで少し緊張が解れたともいうし。

「怒った。女の子に触れられるのはいいが、男に蹴られたくない!」

 あ、ルミノ様の矛先がグイルに向いた。

 ……ってか、なんだ、そのチャラい発言。

「ねー、チャラいって何?」

 もういい、ルピア。

 ひゅんひゅんと鳴る音が更に高くなった。これは回転の速度が上がったのだろう。もう一度薙刀で突きに行ったがふわりとルミノが飛んだ。

 ジャンプなんてもんじゃない。宙に浮くみたいに長い滞空時間は羽根を動かしていないのに飛んでるみたいだ。

 次の瞬間に、グイルが片足を上げた妙な格好になって倒れた。

「わっ!」

 よく見えなかったが、恐らく流星錘の紐を足に巻かれたのだろう。グイルの受身が上手かったので頭は打たなかったようだ。しかしグイルが尻餅をついたところに宙に浮かんでいたルミノが降ってきた。

「グイル!」

 人の心配をしている場合では無かった。今度はかつんと音がしたと思ったら、薙刀を引っ張られた。いつの間にか紐が巻き付いてる。取り上げるつもりだろう。

「はーなーすーかー!」

 薙刀を取られまいと、私が思いきり引っ張ると、逆に鳥男がコッチへ引きずられた。コイツ、軽い!

「おおっと、お嬢さん怪力だねぇ」

 ひゅんと紐を回収して、ルミノが笑う。

 ってか……その喋り方、ホントムカつくんだが。

 グイルもたいしたダメージでは無いようだ。だが、一旦下がらせた方がいいかも。今度はちらとイーアに目をやると、チビながら魚族最強の戦士は頷いて出てきた。

 電撃で大人しく出来ればいいんだけどな。それにはあの武器を封じないと。

 せめてもう少し明るいか軌道が見えれば……。

 ひゅんひゅんと鳴る音がまた高くなった。更に回転の速度が上がっな。当たったら大怪我だぞ!

 せめてもう少し明るいか軌道が見えれば……。

「あっ、そうだ」

 ルピア、いい加減に……!

 突然、ルミノの手元が淡く光った。八の字を描くように光るのは、流星錘の軌跡?

「ルピアがやったのか?」

「うん。印の魔法つけてみた。ここ全体を明るくするのはさすがに無理だから」

 良くやったルピア! これで少しはやり易い。


(八相:中段の構えから左右の手を持ち替えた「攻撃」の構え)


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