さ、宿から出てみよう〜綾次・風華side〜
「じゃあ、まずは街の人に話を聞こっか」
宿を出たところで、このあとのことを考える。
「え、服じゃないの?」
私服で寝ていたのは俺と風華さんだけだったし、あっちのこともあるので、連れてきた。
俺の発言に疑問を抱いている様子の風華さんに、聞き込みから始める理由を伝える。
「杏とりんから、服の系統とかの要望が来るのを待つ意味と、聞き込みしながら服屋を探す意味があるからね」
俺達はこの街のことを何も知らない。
服屋の場所も、もちろんわからない。
ならば、効率を求めるのは必然だろう。
「あ、そっか、そういうことね」
「じゃあ、適当に歩きながら、聞き込みをしよっか」
という提案に、またしても?を頭の上に浮かべている風華さん。
「え、聞き込みなら、別々の行動で良くない?」
…先程、効率を求める…と言ったな。
いや、実際に口に出した訳じゃないけど。
でも、それはこの身あってこそ。
「安全第一、な。この街に来たばかりの俺達は、この街を何も知らない。何が起きるかなんて、予想出来るはずないでしょ?」
安全性を低くしてまで、効率を求めるのは最適解ではないだろう。
「あー、なるほど」
本当、現状の俺には最強の味方だ。
理解の早さや、冷静になるのが誰よりも早い、
……こんなことを思うのもアレだが…
りんや杏ではなく、風華さんが私服を着ているもう1人で良かった。
あの2人では、理解が追い付かなかったり、子供っぽさが出て勝手にどこか行ってしまう恐れがあった。
そんなことはないと信じたいけども。
「じゃ、聞き込み始めよっかー」
今度こそ、何の疑問符も浮かべることなく、俺に付いてきてくれる風華さん。
適当に歩きながらとは言ったが、流石に出会った人にほいほい聞くわけではない。
必要品を揃えつつ、だ。
つまり、これから役立ちそうなものが売っている品を並べている店に入り、買うついでに店員に聞くということだ。
さて、どんな情報が聞けるのやら…
この世界について、なるべく多く、細かく情報を聞けるといいなと願いつつ、ほとんどなかった場合も想像しながら、俺たちは歩みを進めた。