各自、持ち物確認
自分の持ち物を確認する。
詳細は不明だが、どうやら各自バッグやらリュックサックやらが置いてあったようだ。
これも、この世界に飛ばされた意味などにも関係しているのだろうか。
例えば…そう、ゲームの世界ではもはやテンプレの、魔王を倒したら何か事が起こる…とか。
そのために必要な情報や道具などが、各自用意されていたと思われるバッグなどに入っているのだろうか。
もしそれがこの世界で適用されているとすれば、比較的楽に次へ進めるだろう。
なんせ、目的がはっきりしているのだから。
ただ、今のところ、それらしきものはない。
少なくとも俺の今調べられている範囲では、そういった類のものは見付からない。
現金、スマホ、腕時計、カッター、ちょっとした救急箱…
驚いたことに、現金はかなりある。
もう1つ。この世界でも、通貨は日本円なのだということだ。
…俺のところは全て確認を終えた。
何か目的が存在するのであれば、それに関わるものは俺の持ち物にはないようだ。
「皆、確認終えたか?」
俺にはなかったものが、他の人にはあるはずだ。
同じような持ち物になっていることはないだろう。
「えっと、じゃあ風華さんからお願い」
「はいはーい」
風華さんが持ち合わせているものを言ってもらう。
「何故か多くある現金とー、スマホとー、スケッチブックとー…みたいな感じかな!」
…え。
風華さんの持ち物にも、何らかの目的と関連してそうなものはない。
てか何で現金は多いんだ。
スマホはともかく、スケッチブックとか絶対使わないだろ。
「あっ、ふーちゃんと同じ感じだ!」
……え。
杏も同じだと!?
同じ感じだと言ったのか!?
「まさか、りんも同じなんて言わないよな…?」
恐る恐る聞く。
頼む、同じとだけは言わないでくれ…!
「えーっとね、よくわかんないけど…」
「少なめの現金、スマホ、香水…とかかな!」
香水!?
女子かよ!
ここにいる女子2人からは出てこなかった様子なのに!
てか香水とか、どんな需要あんの!?
というか、それよりも!
何でりんだけ現金少ないの!?
……あーあれか、普段の行い的な…
って、香水よりも現金よりも、ずっと大事なのあること忘れるところだった!
「…これらの各持ち物を見て、元の世界に戻るために必要になるであろう物があると思う人…いる?」
誰も、何も言わない。
さて、困ったものだ。
一番楽なコースは潰れたか…
「とりあえず、この宿から出よっか。街の人に、ここはどういうところなのかを聞こう」
行動あるべし。
ここでじっとしていても、事は動かない。
「あっでも、あの、服とか…どうにかしたいかなー…」
杏がそう言う。
そういえば、俺自身もそうだ。
見たところ、全員昨日寝た時の服装のままだ。
私服で寝たのは…俺と風華さんか。
「じゃあ俺、服買ってくるよ。杏、りん。欲しい服の系統とか、そういうのがあれば、スマホに送っといてくれ」
「僕は行かなくていいの?」
風華さんが首を傾ける。
いや、行ってもらわないと困ることがあるでしょ…と心の中でツッコミながら…
「風華さんも来てもらうよ?杏の、下着とか…そういうのは任せるから」
流石に、女子の下着まで買ってくるとは言えない。
こればっかりは、手伝ってもらわなければ困る。
「あ、うん、わかったー」
察したようだ。
いや、これで察せない方がおかしいか。
「え?綾次君が買ってきちゃだめなの?」
…いたわ、おかしいやつ。
「りんさぁ…その辺は察せるようになろうぜ、流石に」
「それはないわ、流石に」
「有り得んよりんにぃ、流石に」
息ぴったり。
俺も驚くほど、この気持ちはシンクロしているようだ。
「…とりあえず風華さん、行こっか」
「ん、りょーかーい」
…ついでに、使えそうなものや、機会があれば聞き込みも少々しておこう。
そう思い、部屋を出た。