お願いだから、頼むよ皆…
「えーっと、風華さん?」
顔は笑っているのに目は笑っていないこの人。
先程の一件、見なかったことにしようとは思ったが…
このまま放っておくと、いつかりんが本気で死ぬ気がしたので、忠告…というか、お願いをすることにした。
「加減っていうものを覚えようね…?」
30分意識戻らない蹴りを繰り出すとか、普通その辺にはいないだろ。
ましてや、女子ならば。
「はいはいわかったって」
本当にわかっているのだろうか…
この状況をいち早く呑み込むことが出来る程の脳を持つ風華さんだが…
1度冷静さを失うと、かなりとんでもないことになりそうだ…
「お願いだからね?この3人の中で一番頼りになるんだからさ」
杏も頭はよく、大人な部分はあるが、年齢のこともあり、まだ子供っぽさは大いにある。
りんも頭はいいのだが、所謂「勉強できるバカ」ってやつだろう。
状況を把握してもなお、危機感を感じず目を輝かせるような、鈍感の持ち主だ。
そう考えると、必然的に風華さんが頼りになるのだ。
だから、大変なことに発展する前に、改善できる範囲で改善して欲しいと思う。
「んで、りん。お願いだから危機感を感じてくれ。興味とかでどうこうする問題じゃないから」
少々精神年齢が実年齢よりも低いのだろう…
サイトの結果の能力がそのまま反映されているこの世界では、俺以外の3人は「世界を創造する能力」を持っていることになる。
そんな能力を、何も考えず発動させてしまったら。
考えるだけで背筋が凍り付きそうになる。
「で、杏。見て笑ってるんじゃなくて、止めようね…?」
「え?りんにぃ嬲ろうね?任せて!」
……この子はどうしたものか。
りんとは違っためんどくささがある。
爆笑しながら言ってるし、本気ではないんだろうけど…
止める気がないことも、本気でないとは言いきれない…
うん。普通に怖い。というか心配。
「はぁー…まぁ悪いところはボチボチ直していこうな、皆」
ここに長居していても、何も進まない。
そういえば、荷物のチェックをまだしていなかったな。
「じゃあ皆、各自今持っているものを確認してな」
何を持ちあわせているかで、このあとの行動は変わってくる。
さて、どうなるのやら…