りんの天性、風華の暴走
「何その超面白そうなの!」
興味津々、瞳キラキラ、テンションアゲアゲ…
なんなのこの人。
状況を話したにも関わらず…
危機感を持たないに留まらず…
逆に楽しみを持ち始めているとか。
誰が予想出来る…?
いや、考えようによってはなくはないとは思うけどさ。
さっき風華さんの腹パン+説教地味た説明受けてさ。
普通、こうくるとは思わないだろ!?
「えーっと…状況理解出来てる?」
「出来てるよ?俺が理解出来ない訳ないじゃん!」
ダメだこいつ。
多分理解出来てはいるんだろう。
理解している上で、この反応なのだ。
俺には他に方法が思い付かない。
…すまない、りん。
「…風華さん、よろしく」
「わかったー」
普通に返事をしているつもりなのだろうが、怒気が溢れ出ている。
額にはお怒りマークも……
流石に浮き出てはいないが、その容姿の想像は容易だ。
よくわからんが、とにかく説教(物理)をするつもりなのだろう。
蹴りの体制だ。
まぁそうなるのを望んで頼んだんだけど。
「え?何か始めるの?俺も混ぜてよ!」
はい。
こいつはどうしようもないです。
なので、この成敗は仕方のないことです。
…そう、仕方ないことなのです。
「1回死んでこい、りん!」
…少し待って欲しい。
確かに頼んだ。
蹴りか拳かなんかは入るとは思っていたし、そうして欲しいと願った。
ただし、だ。
それは制御を持った行動(攻撃)であるならばの話だ。
目の前の蹴りを、見るのではなく聞いてみて欲しい。
…風鳴り音がする。
しかし、これは外で吹いている自然の風の音ではない。
だって、室内だし、窓開いてないし、外見ても木は揺れていないから、強い風は吹いていない。
……結論。
この風鳴り音は、風華さんの蹴りが作り出しているのだ。
それを感じ取り、考え、行動に移すまでは、きっと誰よりも早く動けた自信がある。
「ちょ、風華さ…」
そんな分速50mくらい出たような感覚あるくらいの速度で動いても。
止められませんでした。
「ぐヴぇ!?」
声でかいわー。
もうなんか、どうでもよくなってきた。
ごめんな、りん。
俺に風華さんは止められぬ。
もし止められるなら、方法は2つ。
風華さんの理性が蹴りの制御を可能にするか。
……隣で腹を抱え、さんずいに戻るって言う字のものを目尻に浮かばせ、大声を出しながら笑っている杏が、全力で叫ぶか。
「ふーちゃん流石やんやべぇ笑い止まらへん!!」
ネットでは、こういうときにwを付けまくるんだろうな。
草を生やす、とも言ったか。
止めてあげなよ、と言おうかとも思ったが、時すでに遅しだし。
この笑神の表情筋を動かして、笑いを止めることも不可能だし。
…ま、いっか。
みたいな感じで、スルーさせてもらった。
このあと、りんは30分ほど意識が戻らなかった。
風華さんは落ち着きを、りんは意識を取り戻すのを待った。
…この一件は、見なかったことにしよっか。