説明~最重要事項&推測編~
「さて、杏とりんも来たことだし」
「説明再開、だね」
「そゆこと」
3人の中で、この状況でも唯一しっかりしている…というか、冷静でいてくれる風華さん。
今の俺には、最強の味方だ。
しっかり説明すれば、きっと杏もりんも冷静になってくれるだろう。
……いや、そう信じたいだけだけど。
杏はともかく、りんは説明を受けても、あまり変わらなさそうで心配…
「状況に関しては…あ、1つ言ってなかったか、大事なこと」
「そうだね」
この世界において、元いた世界では確実にありえない事実。
これを伝えなければ、とんでもないことになることは想像に難くない。
「この世界においての重要な事柄だから、しっかり聞いてね?」
「これを知っていないと、色々面倒なことになりそうだし」
…どうやら、風華さんは完璧に理解出来ているようだ。
助かる、本当に助かる…!
「その重要な事柄って?」
「さっき俺がやったの見て、何か思い出さない?」
「え、なんも。てかマジックじゃないの?」
「まぁりんは知らなくても仕方ないか…」
りんは昨日のサイトのことを知らない。
少なくとも、能力についての診断は。
「……あっ!」
お、思い出したっぽいな、杏のあの反応は。
これで、またマジックだとか言ったらどうしよ。
いやいや、それはない………はず。
「あれだ、昨日盛り上がってたサイトの!」
よっしゃキターーーーーーー!!!
杏も理解したことだし、りんにも説明をしなくちゃな。
りんはサイトの存在は知っているはずだ。
別の診断結果で遊んでいたときは、りんが参加していた部分もあった記憶がある。
「りん、名前入れると診断結果が出てくるっていうあのネタサイト、覚えてる?」
「あー、あれね、わかるわかる」
「あのサイトの中に、もしもあなたが異世界に行ったら?っていうやつがあったんだ」
「その診断結果、俺は時空を操る能力と出てきた。この結果とさっき見せたもの。これが何を意味するか、もうわかるな?」
これで、わかんないとか意味不明とか返ってきたら、マジはったおす。
いやしばく。
とか理性で考えてる前に、多分本能的に掌が閃光の如くりんの頬に衝突するだろう。
さぁりん、頼む、理解してくれ!
「あぁー…」
…何やら意味深な相槌。
それどっちの反応なの、おい。
わかったのかわかんないのか言えよ!
いやわかんないだったらどうなるかは俺自身もわかんねぇけどさ!
「えーっと…わかんない、かなーなんて…」
なんて、の「ん」辺りで、俺の掌が反応…
しなかった。
理由を知りたい?
それはこの光景を見たあとで言ってもらいたいものだ。
どんな光景か説明しろ?
俺もよくわかっとらんが、目の前で起きてることを完結に言うならば。
俺が反応するよりも早く…
風華さんの拳が、りんの腹にめり込んだからだよ。
「ぐべっ!?」
アホみたいな声を出して、悲鳴っぽい音をあげる。
杏が吹き出す。かなり爆笑してる。
風華さんも本気ではなかったのだろう、りんの立ち直りも早かった。
…が、まぁ。俺がどうこうできるレベルではなく…
「りん、お前頭良いんだからわかるだろ?この世界では、さっき綾次さんが言った、もしもあなたが異世界に行ったら?って診断の結果が反映されてるの!」
…風華さん怒らせないようにしよ。
心の隅…いや、ど真ん中に決意しつつ、重ねて説明を添える。
「つまり、俺の場合は時空操作が可能なわけだ。さっきコップを変形させたのも、その力」
「え!?マジックじゃないの!?笑えないんだけど!」
端から見たらこの状況、3対1でいじめてるようにしか見えないんだろうな…
などと呑気なことを考えながら、推測を交えていく。
「この事実から予想出来ること。それは、ここが元いた世界とは全く別の…所謂異世界である可能性がかなり高いこと」
「昨日サイトで一緒に盛り上がってた、涼牙たちもこの世界に迷い込んでいる線が有り得ること。この2つだよ」
風華さん、杏が頷く。
女性陣は頼もしいことだ…
風華さんだけでなく、杏も状況を理解し、そこから推測できることまで考えていたようだ。
…に、対して、なんだが。
どーしたらいいんだろ、この人…
めっちゃ目を、キラキラさせているんだが。