どうやらここは……
…目が覚める。
………いつも通りの朝だ。うん。
そう信じたい。
…………
そう、これは夢なんだ。
夢でもなければ、こんなのは有り得ないだろう。
…目が覚めたら、俺の部屋ではないなんて。
そうだ、夢に違いない。
もう1度寝て、次に目が覚めたときには…
その時には、今度は俺の部屋で目覚めるんだ。
さぁ、もう1度目を閉じて…
寝る体勢になり…
寝……る……
……寝れない。
紛れもない、現実と同じ、目が完全に覚めたあとはすぐには寝れないやつだ。
「………は?」
そんなはずはない。
だってここは夢の世界だ。
こんな感覚、あるはずがない。
……のだが。
間違いなくそれだ。
…一旦落ち着こう、状況整理だ。
まず1つ目…
「ここはどこだ?」
どこかの宿のような雰囲気だ。
しかし、俺が昨日寝たのは自分の部屋の、自分のベッド…
宿という線は……
有り得るな。
周りを見渡してみる。
電話がある。
これは、ホテルとかにもある、緊急時とかに従業員を呼べるやつだ。
まぁ場所はあとで、ここを出たあとに地図とか見ればわかるだろう。
周りを見た時に気付いた。
2つ目…
何故、風華さん・杏・りんが一緒の部屋で寝てるのだろうか。
いや、もちろんベッドは別だが。
3人とは、昨日のサイトの話で盛り上がっていたくらいしかない。
いや、りんに関しては、昨日参加はしていなかった。
勝手に名前入れて、結果で遊んでいただけなのだから。
それに、おかしい点がまだある。
昨日、サイトで遊んでいた人たちが、同時にこの奇妙な現象に襲われたと考えるなら。
涼牙やすももさん、将人がいないのは説明がつかない。
「……ん、待てよ?」
昨日のサイトでは、「もしもあなたが異世界に行ったら?」という内容だった。
「なら…いやまさか…」
頭の中で否定しつつ、机の上にあるコップに手を翳す。
すると、コップが想像した形に変化した。
「これは、やっぱ…そういうことか…?」
昨日のサイトでの俺の診断結果は、「時空を操れる能力」だった。
だとしたら……
とるべき行動は定まった。
まずは、風華さんと杏、りんを起こそう。
混乱するだろうから、ゆっくり、時間をかけて説明する。
そのあとは、各自の状況確認だ。
俺もそのときに確認しよう。
今はとにかく、3人を起こさなければ。
「風華さん、杏、りん。話がある。起きて欲しい」
静かに声をかける。
思えば、何故かは不明ながら、俺はもう幾分か落ち着いている。
さて、どこから話を始めるか…
そう考えながら、3人の意識が覚醒するのを待った。