異世界転移の始まり
「うわ、マジかこれ!」
「強ぇぇ、神やん!」
「えー、うちこれなん?」
何やら楽しそうな雰囲気で、皆が皆笑いを共有している。
実際、彼らはものすごく楽しんでいる。
彼らは、とあるネットのサイトで話が盛り上がっている。
そのサイトとは……
「ねね、今度は平仮名でやってみて!」
「なんか楽しそう!俺のもやってみてくれる?」
恋愛・スポーツ・需要度・ほのぼの……などなど、様々なジャンルがある、名前を入力するだけで結果が出てくると言う、正直完全にネタサイトだ。
そして、そのジャンルの中にはこんなものも……
「俺世界を滅ぼす能力だってさ!」
「酸素を出せる能力…あ、地球温暖化にはいいかも?」
「待って、世界を創造する能力だって!」
「俺時空操れるらしい強くねキタコレ!」
もしもあなたが異世界に行ったら?
…これはあれだ、誰も本気にはしないだろうが、作った本人を厨二病なのかと疑いたくなる感じのやつだ。
「異世界」。確かに響きはいいし、非日常的でどことなく惹かれる単語だ。
まぁ俺にとっては、だが。
しかし現実には有り得ない。それがこの世界の理だ。
能力なんて言えるほどの力を、俺たち人間は持ち合わせてない。
生まれ持って与えられた力は、大なり小なり差はあるだろう。
でも、ゲームの世界のように、敵を倒したりクエストをクリアすればレベルアップ…なんて単純なものは存在しない。
そう思っていたし、それが事実だと信じているのが当たり前の世の中だった。
…今日、目が覚めてからの光景を見るまでは。
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ーー遡ること前夜。
かなり楽しい。ヘンテコな回答が返ってきたり、名前をちょっと変えたりするだけで結果が違ってくる、このネタサイト。
つい昨日までは、「あの人俺のこと嫌いだろうなー…」とか思ってた人とも、今日はなんだかいい雰囲気で一緒に楽しめている。
まぁ嫌われてるのは事実だろうし、いい雰囲気だと思っているのも、俺がそう願っているからというだけかもしれない。
それでも、今日この時は…少なくとも俺はとても楽しい。
そういえば、俺自己紹介してなかったな。
俺の名は綾次。趣味はたくさんあるけど、中でも音楽関連のことが好きだ。聴くのも歌うのも、そして書くのも。
まぁ俺のことはいいとして。
先程から、このサイトの結果で盛り上がっている。
その題名は…「もしもあなたが異世界に行ったら?」
一言で言えば、異世界に行ったらどんな能力が使えるのかが返ってくる、という内容だ。
ちなみに俺は、「時空を操れる能力」を持つらしい。
本当にそんなものがあればとっくに使いまくってるわ、と心の中でツッコミながら、他の人の結果を見ている。
「チート過ぎるのがきた」
そう言って笑いながら、皆に共有している銀髪の彼が、先程からの話題を作っているすももさん。
皆と比べても、かなり低い声が特徴だ。しかし、出そうと思えばめっちゃ高いところも出る。羨ましい声帯を持っていることだ…
彼がサイトで名前を入れたところ、「世界を滅ぼす能力」というのが出た。
なんだ、ただのチートか…
…ん!?世界の次元で破壊活動できるの!?
と、驚きながらも爆笑していると、他の人の名前をサイトで入れてくれた。
次は…杏の名前を入れたのか。
杏は、黒髪ストレートの短髪で、いつも元気っ子な感じだ。
キャラが強く、突然笑いだしたり、抱きつき魔だったり…と。
そして驚くよね。結果「世界を創造する能力」。
世界を滅ぼす能力があるんだし、正反対である、世界を創造する能力あっても不思議はないが…
……俺の周り、おかしいんじゃないだろうか?
「僕はー?」
そういって結果を気にしている、ピンク色の髪をたなびかせている彼女は風華さん。
僕という一人称がとても合う、少々ツン強めの女性だ。
気になる結果なのだが…これはもう、お前らなんなのとしか言えない、うん。
だって、またしても「世界を創造する能力」だよ?
そんなの、ホイホイと2人も出てくるか普通。
俺の時空操作も相当だと思ってたのに…こんな人たちと比べたら…
…まーいっか。どうせネタだ、本気にするわけでもない。
ひとまず今日は寝よう…なんか疲れが抜けてないみたいだし。
皆に就寝の挨拶をし、俺はベッドに体を預けた。
ひとまず予定があるのでここまで!続きが読みたいと言ってくださる方がいれば、コメント下さい!では!