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One scene story  作者: ATS
6/20

シーン006:瞳



 その女の子は、制服を着ているところを見ると高校生だろうか。


 長年のものによる自然な日焼けだろう、褐色の肌が実に良く似合っていて、さらさらな髪をショートにまとめているのが健康な感じを受ける。


 一体―――彼女は何を見つめているのだろう?


 その女の子は、決して人の通りが少なくない道の真ん中で立ち止まり、じっと、じっと何かを待っているかのように空を見上げていた。


 空は、午後から出てきた灰色の厚い雲に覆われ、今にも雨が落ちてきそうな様子だったが、これと言って特に変った様子は無い。


 いや、この寒さを考えると雪になるかも知れないな……

 ここ最近の冷え込みはそう思わせるのに十分な寒さで、道ゆく人の服装を見てもそれが伺える。


 俺はそんな寒さも気にせずに、どんよりと曇った空を見上げ続けている女の子が、妙に気にかかってしょうがなかった……

 そして、もう一度その女の子の方へ目を向けようとした。


 すると、思ったとおり、空からはちらほらと白いものが舞い降りて来る。


 この辺も、昔は積もる位に降った雪だったのに―――俺は近頃あまり見る事が出来ない雪に、少々新鮮な感じを覚えていた。


 そうか……やっぱり彼女はこれを待っていたのかも知れない。


 そう思い、俺は再び彼女の方へ目を向けると、一瞬だったが彼女の瞳と出逢った気がした。


「おい、信号青だぜ!」

「あ、ああっ」

 いつのまにか信号が青に変っていたらしく、友達が立ち止まったままの俺を見て不思議そうな顔をしている。

「おっ、雪が降ってきたぜ。寒いから早く帰ろうぜ」

「そうだな……」

 俺はそう答えながらも、もう一度だけ振り返って見たのだが、そこには既に、女の子の姿は無かった


 あの時、一瞬だけ出逢った彼女の瞳には、天使の羽根が写っていた―――そんな気がした。




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