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Act6.ヒロインが来てから衝撃の事実に気が付きましたが、和臣様は女の敵です!

夏休みは、和臣様と深い関係になってからはじめて過ごす長い休暇で、私ははじめて和臣様と和臣様の別荘で二人きりで過ごすというビッグイベントを行うことができ、私の一生の思い出になった。

でも、楽しい夏休みはあっという間に過ぎてしまって、私はついに和臣様と別れる覚悟を決めなければならなくなった。


夏休み明け最初の日に、私は偶然姫野桃花とすれ違った。私とは真逆の天真爛漫に明るい彼女は、誰からみても輝いているだろう。もちろん和臣様からみても……

私の記憶では、彼女と和臣様が仲良くなるのは10月に行われる学園祭の日だ。それまではまだ婚約者として堂々としていても良いだろう。


ある日、私は彼女と和臣様が仲良さそうに話している姿を偶然目撃してしまった。今まで経験したことのない嫉妬という感情に、私は酷く動揺してしまった。

この日が来るまで、私は和臣様に対する気持ちは捨てて、新しい恋に目を向けるつもりでいた。

でもそんなのは所詮机上の空論だった。

いざ現実になると、そんなに簡単に捨てられるほど軽い恋心ではなかったと気付いてしまった。


そして、やっと物語のなかの美月の気持ちがわかってしまった……


好きになってもらえないなら、いっそのこと嫌われたい、憎まれたい…


でも、何度考えてもその方法は、和臣様の好きな相手を傷つける以外に思い浮かばなかった。


姫野さんが転校してきてから、和臣様はだんだん彼女に惹かれている筈なのに、私に対する行動の変化は全くなかった。

これまで通り時々一緒に帰って、車の中では恥ずかしいくらい甘い言葉を囁いて、キスされた。和臣様のキスはまるで私に飢えているかのように激しくて濃厚で、私はいつも和臣様が私を求めているかのように錯覚してしまう。


そんな私と和臣様の二人の関係は変化することなく、物語のターニングポイントである、学園祭の日を迎えてしまった。

私の記憶が間違っていなければ、学園祭の日に二人は偶然体育倉庫に閉じ込められ、一夜を過ごすことになる。漫画上では、キスはするけど単に寄り添って一晩を明かすだけなのだが、私と和臣様は身体の関係までいってるわけだし、今時の高校生が一晩一緒にいて、清い関係を保っていられるのか甚だ疑問だ。


結局私は二人のことが気になって、その日は一睡も出来なかった。


学園祭の次の日は土曜日で学校は休みだったので、私は家の自分の部屋でゴロゴロしていた。すると、なぜか和臣様が私を訪ねてきて、姫野さんとは何も無かったかのように、いつもどおり触れてきたかと思うと、ベッドへと押し倒された。


昨日、姫野さんに触れた唇で、私の平気でキスする神経が信じれなかった。

でも、それを拒んで和臣様を手放す勇気は私には無かった。例え往生際が悪いと言われようと、私は和臣様の好意にすがりつきたかった。私が我慢してそれで和臣様が変わらず触れてくれるならそれでいい……


昨日、体育倉庫で過ごした和臣様は疲れている筈なのに、なぜか私に対する触れ方がとても性急で、私は動揺してしまう。姫野さんに対する性的な欲求を私ではらしているのだとすぐに気づいたが、いつもより余裕のない和臣様の姿はなんだかとても色っぽくて、私はそれだけでまいってしまった。


好きでもない女の身体で、性欲を発散させる最低な男の筈なのに、この手を振り解けないのはきっと私の意志が弱いせいだ。








☆☆☆side和臣☆☆☆


夏休みに入る直前に、校長から夏休み明けに編入生が来ることを知らされた。

何でも、校長の孫娘で両親の仕事の都合で海外に行っていたが、日本に戻ることになったらしい。

両親の経歴を調べると、一部上場の大きな企業に勤めている以外は特に特別な家との繋がりはなかった。現校長も教師からそのまま校長になった人物で、経営者とはなんの関わりもなかった。

絶妙なタイミングで、エサとなりそうな人物が入ってきたことに私は喜びを隠せなかった。その為、夏休みは美月の気持ちを捕らえておくのに必死で、別荘で二人で過ごすことまでしてしまった。


夏休み明け編入生がくると、私は早速次の計画の為の行動に移った。編入生には最初は尊大な態度をとり、適当に嫌われるようにした。それから頃合を見て優しく接した。大抵の人間は悪い印象から良い印象を与えると、その人物を良い人間だと過大評価してしまう傾向にあるので、それを利用したが、人を疑うことを知らない編入生は、まんまとその方法に引っかかってくれた。

相手が自分を陥れることが前提の世界で生きていない人間は、性善説で生きていることが多いので、この方法をとれば好印象を超えて好かれることがほとんどだった。


それから、何かと編入生を気にかけてあげて、少し話すようにしたら、あっという間に編入生は私に恋するようになった。仕上げに学園祭の日、体育倉庫にある掃除用具を持って来て欲しいと頼み、自分もその後を追いかけ谷口に体育倉庫の鍵をかけさせた。暗闇、密室という状況下で一緒に居れば、編入生との距離が一気に縮まるだろうと予想してのことだった。

好きでもない女と一緒にいることは、苦痛でならなかったが、全ては美月を本当の意味で手に入れるために必要なことだったので、なんとか一晩耐えることができた。キスを交わしはしたが、帰ってすぐに水で洗い流した。

しかし、それでも不快感が消えず、結局美月のところに行って昨夜のストレスを美月にぶつけてしまった。いつもより性急に求めて雑な扱いなはずなのに、美月は簡単に私を受け入れてくれた。そのことが私をすっかり舞い上がらせた。


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