Act2.思い出づくりといえばデート!
私はいろいろ考えた末、学園追放になったことを考えてとにかく勉強を真面目に取り組むことにした。勉強を中心にしたため、とりあえず部活には入らないことに決めた。まあ、もっとも部活以外の習い事が忙しいんだけどね。これでもご令嬢ですから。
私は普通の公立校に通うことも想定して、親にお願いをして、家庭教師ではなく普通の予備校へ行くことを何とか了承してもらい、普通校の人と普通に喋れるように訓練をはじめた。今いる世界は普通の高校生とは少し違うことを理解していたので、とにかく万一のことを考えて万全の準備をしておかなくてはならない。
今世の私はハイスペックな頭と容姿をゲットしていたので、あまり勉強に困ることはなかったのだが、和臣様に睨まれることになる=私の上流階級生活ENDでもあるため、家族に迷惑にならないように一人で生きていけるようにも準備をしなければならない。
最悪東京の大学に通うことも許されないかもしれないので、海外に行っても良いし関西の国立を目指すのも良いかもしれないと考えていたので、最近は学校の図書館へ行って、英語の小説を読んで、英語のリーディングの訓練をしていた。
私がいつも通り放課後、図書館へ行き本を選んでいると、なぜか背後から和臣様の美声が耳元からあぁぁぁ
「美月。何をしているの?」
振り返ると、婚約者の和臣様があり得ない近さで立っていた。
「あの、本を探しているんです。」
「ふ〜ん。英語の勉強?」
「はい。小さい時から英語は習ってはいるので、聞き取りは大丈夫なのですが、ボキャブラリーが足らなくて。」
和臣様は本棚を見つめて、一冊の本を取り出して私に渡してくれた。
「それ、単純にストーリーが面白いから丁度いいと思うよ。」
「ありがとうございます。」
私は和臣様との距離が近すぎて心臓の音が高鳴って、爆発しそうになる。
しかし、そんな緊張ばかりしててもダメだ!私は次の思い出ステップに向けて頑張らなければならないのだ!
「あの、和臣様。今度の土曜日か日曜日のご予定は?」
「空いてるけど?」
「あの、でしたら一緒に何処かへ行きませんか?嫌じゃなければですけど……。」
「嫌じゃないよ。どこか行きたい所があるの?」
「私、観たい映画があるのですけど?」
高校生のデートといえば、やっぱこれでしょ!
薄暗い中、手をつないじゃったり、キスとかぁしちゃったりぃ〜ギャー妄想が止まらん!!!
「いいよ。じゃあ、家まで迎えに行くよ。」
「○○駅で待ち合わせでお願いします。
待ち合わせというのに憧れてまして……。」
****
デート当日、私は駅の改札を出たすぐのところで和臣様を待った。
デートに着て来た服装は、定番のワンピースだ。裾の所にレースがついてて可愛いが、甘すぎないデザインが気に入っていた。
待ち合わせの間、なぜかナンパらしき男性に声をかけられたりもしたが、前世の記憶が戻ってしまった私としては、他人事のように思えてしまい、危うくそのまま連れて行かれる所だったのを、和臣様が助けてくれた。
ナンパされた彼女を助けるとか、イケメンのテンプレ過ぎるシチュエーションに興奮してしまった。
「和臣様、ありがとうございます。」
「行くよ。」
そう告げられ手を取られた。
握られた手のひらから体温が上昇して、もう興奮とドキドキが止まらない!!
私達はカップルシートを選んで、ジュースを買っ席に座った。
一度座りたかったのよね、カップルシート。和臣様との距離が近いことを良いことに、身体をくっ付けて座り、和臣様の腕に抱きつく。
嬉しくてテンションMAXの私とは反対に和臣様の表情は固いことが、和臣様に好かれていないことを物語っている気がして、心がズキッと痛んだが、今は自分の気持ちを優先したかった。
映画はよくあるラブコメで、とても面白かったし、何より和臣様とくっ付いていられたのが幸せだった。エンドロールが流れたので何となく腕から離れると、和臣様が私の頬に手を置いて顔が近付いてくる〜!!!
とっさに目をぎゅうっと瞑ると、柔らかいものが私の唇に触れた。
慌てすぎて、ゆっくりキスを堪能できなかったため、こんなこと言ったら、また嫌われるだろうと思いながら、和臣様にもう一度とお願いをしてみた。
「和臣様。もう1回、キスして欲しいです。」
優しい和臣様は、私の耳元で「いいよ」と囁いて、何度も触れるだけのキスをしてくれた。
もう気持ちよすぎて、身体が溶けそうだ。
というかそのキスのおかげで、その後のことがうまく思い出せない。
でも、ファーストキスの素敵な思い出がGETできたので良しとしよう!
☆☆☆side和臣☆☆☆
美月には、私の手配した護衛がついていたが、その護衛からの報告で美月が予備校に通っていることがわかった。
最初、その報告を受けた時は予備校に浮気相手と通っているのかと思ったが、真面目に勉強して、話す相手もなぜか公立高校に通う女子ばかりだった。その事に安堵しつつも、美月が予備校に通って大学受験するという行為が自分から離れようとしているように思えて不安を覚えた。
そんな時、美月に探りを入れようと図書館に入る美月の後をつけて声をかけると、美月からデートに誘ってきた。
迎えに行くというのになぜか待ち合わせをしたいと言われてしまった。どうやら待ち合わせというものに憧れているらしい。
待ち合わせ場所に着くと美月はナンパされていて、危うく連れて行かれそうになっていた。全く、もう少し自分が男の目を引くタイプだと自覚して欲しいものだ。
どさくさ紛れに美月と手を繋いで映画館へ向かいカップルシートに座った。
するとなぜか美月が腕に抱き付いてきた。
美月はどちらかというとガリガリというよりは、少し肉付きが良いタイプだし、困ったことに十分すぎるくらいの豊満な胸を持っていたので、腕にぎゅうっとしがみつかれると、どうしても柔らかい感触が私の腕に伝わってくるのだった。
このまま二時間近く、美月の柔らかい所を感じられる幸せと、何も手出しできない悔しさでつい眉間に皺を寄せてしまう。
美月は結局、私にくっ付いたまま映画を鑑賞し終えた。こちらの気もしらない無邪気な美月が腹立たしくて、エンドロールが流れて美月が離れた隙に、頬に手を置いて美月の唇を奪った。
唇を離して美月を見ると、うるうるした瞳でこちらを見つめる美月から予想もしないお願いがされた。
「和臣様。もう1回、キスしてください。」
キスだけで踏みとどまれるかを疑問に思って、美月のお願いを聞き入れるかを悩んだが、せっかく美月が積極的になってくれているのにそれを拒否することはできず、要求通りもう1回でなく何度もキスをしてあげた。
気持ちとしては唇だけでなく美月の身体中にキスしたかったが、それは今後の楽しみにとっておくことにした。