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Act1.当て馬ライバルキャラの決意!

ワクワクドキドキの高校の入学式当日、校門をくぐって見えた校舎と中庭の風景を見て、私はすべてを思い出してしまった。この世界がかつて前世で読んでいた少女コミックの世界であることを。


呆然と立ち尽くす私を疑問に思った母親が優しく声をかけてくれるが、私はそんな声もどこか遠くで聞こえる雑音のようにまったく私の耳には届かなかった。


私が今いる世界は『シンデレラ♡Lover ~学園王子からの求愛~ 』という少女マンガだ。

なぜそんなことに今まで気づかなかったのかは自分でもわからないが、気づいてしまったのだから仕方がない。

私は少しだけ冷静さを取り戻すと、母親に笑顔で大丈夫だと返して入学式が行われる会場へと向かい用意された席に座った。


座りながら、ただひたすら前世の記憶をたどることに集中した。

私は前世、普通の漫画が好きな少女だった。

そんな私がハマったマンガが『シンデレラ♡Lover ~学園王子からの求愛~』だった。

好き過ぎて二次創作で私自身もマンガを描いていたし、たくさんの薄い本を買い求めイベントへと赴いていた。

内容は至って単純、高校2年生の夏休み明けに編入してきた主人公の姫野桃花と学園の王子と呼ばれる生徒会長の御堂和臣様が、最初は反発しあい、だんだんと仲を深めて恋愛に発展するというストーリーだ。

そしてここが重要なのだが、私の役どころはヒロインと生徒会長様の恋仲を邪魔する役なのだ!

はい!詰んだ〜。

私の人生15歳にして詰んだ~。


そんなふうに絶望に浸っていると、私の婚約者様であるこの学校の生徒会長様が壇上で挨拶をはじめた。


今にして思えば、婚約者様が異常なくらい好きなはずだ。

婚約が嬉しくて、少しでも一緒に居たくてこの学園に来た。でも、そんな幸せは今日でおしまい……。

さようなら、私のハッピースクールライフ!!



……しかし、待て。


主人公が入学してくるのは、幸い9月だ。ということは、私の命はあと5ヶ月あるではないか!


私は今日から決意する!


5ヶ月間で大好きな人と楽しい思い出をたくさん作って、5ヶ月だけ楽しい学園ライフを味わうと。そして2学期からは一切婚約者様との関係は絶とう。

うん。完璧!

私ってばかしこい~!

幸い『シンデレラ♡Lover ~学園王子からの求愛~』は一般向けの少女漫画雑誌の連載だったので、ライバルがそれほど酷い扱いをされることはなかった。

マジ、助かった!


こうして、私は大好きな婚約者様と楽しい思い出残そうぜ計画を実行することを入学式の日に決意した。


****


入学式が終わって教室へ行き担任の紹介や、今後のスケジュールが発表された。


「美月。部活とかどうするの?」


そう声をかけてきたのは、腐れ縁の親友の谷口琴梨だった。私がこの学園を受験すると知ったら、なぜか自分も受験すると言い出し、同じ学校しかもなぜか同じクラスになった。

ちなみに琴梨とは縁があり小学校からずっと連続で同じクラスになっていて、今回も連続記録を更新してしまった。


「部活かあ、今は何も考えてないんだけど。生徒会長様のファンクラブとか?」


「自分の婚約者のファンクラブに入るとか、ファンクラブに喧嘩売ってるの?」


「いや、多分夏明けたら婚約解消になるかもだから……」


「はあ?!あの腹黒和臣様があんたを手放すはずないじゃない。」


なぜか、琴梨は和臣様のことを腹黒と呼ぶのだが、未だにその理由がよく分からなかった。和臣様は腹黒キャラではなく、正統派王子キャラだったのだが……。


帰宅しようと教室を出て校門に向かうと、なぜか和臣様が私のことを待っていてくれた。


「美月。」

「和臣様。どうかされましたか?」


婚約者の和臣様はなぜか私の頭を撫でてくれて、笑顔をくれる。

はあ、今の私にはまぶしすぎる。

よくこんなイケメンの笑顔に耐えていたな私……。


「自分の婚約者のことを気にするのは当然だろう。」


そうですね、でもそれも5ヶ月後には変わってしまうのですがね、と心の中だけでつぶやく。


「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。お友達も一緒でしたし。」


「そうか。」


私は先ほど決意した楽しい思い出残そう計画を早速実行に移すことにした。

せっかくこんなイケメンと婚約者なのだからいっぱい触れたい!弄りまくりたい!ということで、さすがに弄るとドン引きされて計画実行もままならない可能性があるので、とりあえず、変に思われない程度に和臣様に抱きついて、肩の上におでこを乗せてみた。


「心配してくれて嬉しいです。」


ギャー、ハ ズ カ シ イ!!!!

顔から火が出そうになりながらも、和臣様の体臭をこっそりと嗅いでみた。

私変態か?と一瞬思ったが一度吹っ切った女は怖いものなどないというわけのわからない言い訳で自分を納得させる。

十分に和臣様の体温を感じて満足した私は、和臣様から体を離して様子を伺うと、なぜか険しい表情を浮かべていた。やっぱり嫌だったのな……と思ったが、どうせ5ヶ月後にもっと嫌がられるのだから同じじゃん!と思い、和臣様に別れのあいさつをして、迎えの車に乗り込んだ。







☆☆☆side和臣☆☆☆


入学式の日、壇上で話しながら自分の婚約者を探すとすぐに見つけることができた。


美月がこの学校に来たのは、私がどうしても美月をそばに置いておきたくて、美月の両親を言いくるめて入学させた。

まだ中学生の美月に手を付けるのは何となく良心が咎めるのと、彼女の父親と兄から睨まれていることもあり、あえて一定の距離をとっていたのだが、今日からは美月に少しずつ近付いて、自分の卒業までには美月の全てをいただく予定だ。


帰宅時間に合わせて美月を待ちぶせする。中学入学と同時に美月にGPSが仕込まれたストラップをプレゼントしたため、美月がどこにいるかはすぐに把握することができた。


美月はどうしたのか?と問うが、本心は出せないので頭を撫でて婚約者を気にするのは当然だろうと告げると嬉しそうに笑って、なぜか美月から抱き付いてきた。


私は予想してない美月の行動に動揺してしまった。美月の甘い香りと柔らかい身体が、密着して、下半身が意志を持ち始める。

このまま抱き上げて美月を自分の家に連れて帰ってしまおうかと悩んでいると、美月は私から身体を離してしまった。

もっと美月の感触を味わいたかった気持ちが顔に出てしまい、不機嫌な表情になってしまった。


これまで美月から私に近付いてくることはほとんど無かったので、私と美月では好きと想う重さが違うのだと思っていたが、どうやら美月の気持ちに変化が現れたようだ。

美月と離れたく無かったが、まだ生徒会の仕事が残っていたので仕方なく美月と別れを告げた。


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