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宝石使いと二人の少年  作者: ピーターコーン
旅立ち
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サトゥルヌスの祭り

農耕の神様サトゥルヌスの祭り


1年で一番大きな感謝祭       (12月24日月曜日)




ソラはもう決めていた。


今日が一番いいとわかっていた。


自分の持っているものの中で一番大きい背負い鞄に必要なものをつめた。


ごくごく簡素な用意であったが、その小さな体には大きすぎるほどだった。


けっきょくドロップは買えなくて、動物チョコとクラッカーを鞄に入れた。


父親は今宵の祭りの為のパンを朝早くからせっせと焼いている。


パンと言うよりケーキに近いその食べ物は、数種類のナッツと干した果物、


じっくり醗酵させた果実酒がたっぷりと入った、村では一番贅沢な食べ物だ。


年に一度、農耕の神サトゥルヌスに捧げる豊穣の祝い。


祭りの日、太陽が沈み始めた頃、


それぞれ持てるだけのものを持って広場に集まる。


果物屋は果物を、魚屋は焼いた魚を、パン屋はパンを、ぶどう農家はぶどう酒を。


食べの屋でないものも、それぞれ趣向を凝らした手作りの品々を手に道を急ぐ。


人々は1年の実りの恵みに感謝し、炎と歌と酒を捧げ、


大きなかがり火を囲んで夜通し踊る。


子供達はお菓子をもらい、今日だけはよふかしをしても誰にも怒られない。


村中が陽気で幸せな歌で包まれようとするまさにその時。


祭りの夜の子供達の全てがそうであるように、ソラはそわそわと父親の背中に話しかけた。


「お父さん、僕は先に行っちゃうよ。」


父親の方も自分の手元から目を離さず言い返す。


焼きあがったたくさんパンにリボンを付けている真っ最中だ。


ソラの顔ほどもあろうかというような大きなドーナッツ状のそのパンに、


赤いリボンを巻きつけて祝いの気持ちを表すのだ。


「ああ、気をつけて行っといで。おじいちゃんとはぐれないようにするんだよ。」


「はーい。」


「ソラ、ちょっと待ちなさい。」


父親の呼び止めに、ソラは跳ね上がりそうなほどびっくりして立ち止まった。


「ほら、これ。おじいさんとおばあさんにちゃんあいさつするんだぞ。」


そう言って、父親は今リボンをかけたばかりの祭り用のパンをソラに渡した。


「うん、ちゃんとあいさつする。じゃあ行ってきます。」


雨が降るかもしれないから。


ソラはそんな事を言いながら、自分用のフードつきマントを羽織って出かけた。


父親はそんなソラの様子を特に気にも留めなかったが、


その日、空には雲ひとつなく、虹色に見えるほどの満天の星が輝いていた。












「それじゃ、行こうか。」




来た時と同じホロ付き馬車。その荷台に乗り込んで。


ソラは村の喧騒を遠くに聞きながら、ずっと夜空の星を眺めていた。


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