宝石使いルキウス
デケンベルのカレエンダ サトゥルヌスの日 (12月1日土曜日)
曇り時々雨
その日、海に面した小さな村に一人の若者がやってきた。
ホロ付き馬車を操りながら、山の向こうからやってきた。
ぶどうの栽培が盛んなこの地方の山はすでに紅葉も終わりに差し掛かり、
山は錆びた鉄の粉を振り撒いた様なすすけた朱色に染まっていた。
町に着いた若者は、村で唯一の宿に部屋を取り、村をゆっくりと一周した。
ピーナッツバター色をした髪を左側だけ細かい三つ編みに幾つも編み上げ、
髪の色に合わせたような黄色い色付きめがねをかけたその青年は、
一般的な麻の服に首には色とりどりの石で出来た首飾りを幾つもつけて
腰にはたくさんの皮袋が取り付けられたベルトを巻いていた。
家一軒一軒を、通りの一つ一つを確かめるように村を歩き、人々に気さくに声をかける青年。
突然現れたよそ者に、小さな村の人々は大変驚き、そして戸惑った。
あまりに異様なその風貌を不審に思う村人達を尻目に、青年はうきうきと村を見て回る。
楽しげに、そして興味深く観察しながら歩く青年は、いつしか村はずれのパン屋にたどり着いた。
パン屋の軒先に掲げられた木彫りの看板をものめずらしげに眺める青年に、
パン屋の主人が店の中から声をかけた。
「いらっしゃい」
声をかけたもののむっつりとして愛想も無いパン屋の主人を目の前にして、
青年はにっこり笑って腰ベルト皮袋から紙切れを取り出し手渡した。
「こんにちは。僕は王都から来た魔法使いブリテリセウスの弟子、ルキウスです。
この村の医者バートンさんの要請によりやってきました。どうぞよろしく。」
主人の前に進み出て、主人の手をうやうやしく握りあいさつをする青年。
突然自己紹介に顔を青くして驚く主人の様子を、
青年は色付きめがねの奥でじっくりと観察していた。




