表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

その記憶、お引き取りいたします ~ 伏木堂蒐集録 ~

第0期「その記憶、お引き取りいたします」~伏木堂蒐集録~ 『はじまり、はじまり』

作者: えんぴつ
掲載日:2026/04/07

[第1期]の前の、序章です。


伏木一ふしきはじめです。

職業?ええと、何というか、骨董商ですかね。


え?いや、ツボとかそういうのはちょっと……

鑑定とかよく分からないんで。すいませんね。

私は、モノには興味がないんですよ。


ーーうちが扱っているのは記憶でして。


そう、あなたの頭の中にある、それ。

それがうちの売り物なんです。


ねぇ旦那、

何かこう、古い日記とか、日誌とか、この家に残ってませんかね?

それとも何か、奇妙な体験談なんかあれば、ぜひ聞かせていただきたい。


え?日清戦争中に曾祖父が書いた日記がある?!

ちょ……ちょっとそれ、是非、見せてくれませんか?!



……いやはや、これはすごい。傑作だ。

ほとんど官能小説ですな……

えぇ?知らなかった?

読んだこと、なかったんですか?ずっと蔵の中に?!


なんて勿体無い!!


買い取ります!買い取らせてください、是が非でも。

いくらでも出します。


いやいやいやいや、困ります困ります。

持ってけ、だなんて言わないでくださいよ。

こんな貴重なモノがタダだなんて、そんなことはね、間違ってるんです。


いいですか?

ほんとに読む価値があるのはね、値札のついてる本じゃない。


こういった、お金にならない記憶なんです。


えぇ?矛盾してるって?

お金にならないものに、金を出すのは矛盾じゃないか……って、

そう言いたいんですか?


はは、まぁ、細かいことはいいじゃないですか。

お互い、損にならない話なんだし。


いやいやいやいや!!詐欺じゃないです。

ただの取引ですよ、民法にほら、あるでしょ?

売買契約ってやつ。

合法ですよ、合法。


えっと……それじゃ、こんなのはどうです?

今、欲しいものとか、なんかないですかねぇ?

それと交換ってのは、どうでしょう?

それだったら、お金のやり取りってことにはならないですよね。



ほうほう。

クマが来たら困るから、畑の端の柿の木をぜんぶ切って欲しい?なるほど。

えーっと……では、つまり樹木伐採工事と引き換え。

って事で、ひとつ、よろしいでしょうか?


ついでに蔵に欲しいものがあれば持ってけって……

そんな。さすがにそこまで無遠慮なことは……いいんですか?

おたくの蔵、あの立派なやつ。隅から隅まで、漁っても?!



……そうですか。

施設に、ですか。

確かに、息子さんたちにしてみれば、そうかもしれませんねぇ。

すると、あの畑は?


……誰も?


それじゃこの家も、蔵も?



……そう、ですか。

また一つ、記録がなくなってしまうんですね。


ここにこんな立派な古民家があったことも。

みんなで収穫の喜びを分かち合ったことも。

囲炉裏で魚を焼いた、あの香ばしさも。


こんなささやかな暮らしが、代々守られてきたことも……



お茶、ありがとうございました。

日記、確かにお引き取りいたします。


一応、こいつが契約書ってやつでして……

工事完了後に、日記引き渡し、と。

それで、ひとつ。


はい。お願いします。




……ありがとうございます。


では、詳細はまたご連絡します。

あ、日記、ちゃんとそのまま保管しておいてくださいよ。



それじゃ、今日はこのへんで。

ごきげんよう。


また、来ます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ