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文武両道才色兼備超完璧な先輩は尋常じゃなく催眠術にかかりやすい体質だった

「――いいですか、ナオ先輩。今から私の指を三回鳴らします。そうしたら先輩は、私を愛して愛してやまない、『地雷系女子』へと変貌を遂げるのです。準備はいいですか? これは魔術であり、催眠術であり、そして私のただのワガママです」


パチン、パチン、パチン。


指を鳴らした。

冗談だった。

近所の古本屋で買った『催眠術入門』という本が、こんなにも効くとは思わなかった。


放課後の誰もいない旧文芸部室。


憧れの、あまりに完璧すぎる、美しすぎて近寄りがたい陸上競技の女王にして勉学の申し子、ナオ先輩に対する、ちょっとした悪戯のつもりだったのだ。


冗談でもこっちを振りむいてほしいと思っただけだったのに。

他の人で試した時には全く効かなかったのに……。


「真面目な人って催眠術もかかりやすいのかな?」

私の瞼には指を鳴らして声をかけただけで一瞬でトロンとした目になった先輩が焼き付いている。

あまりのかかりやすさに冗談だと思ったくらいだ。


ナオ先輩。


東大理Ⅲどころか全世界の大学どこでも入学できる学力を持ち、ハードルを跳べば重力に嫌われ、辞書を読めば誤植を見つけるようなストイックの化身が、あんなにも「真面目に」壊れてしまうなんて。

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