炎の王墓
かつて、神々はそこから降ってくる火炎の群れの大きなほうを太陽と月に。
小さいほうを夜空にばら撒き星にしたという。
走っていた。
ただ、走っていた。
雨の間隙を縫うように、或いは天地を忘れた雷が大地を平行に這うように。
全てが止まり、自分だけがこの狂った世界で動き続けられる超人である。
そんな事を夢想する。
誰よりも早く、誰よりも先へ。
自身既に風になり、音速を越え電子になり、果ては光速にて燃え尽きるまでを目を閉じ静かに感じていく。
皮膚が溶け、肉が一瞬で焦げていく。けれど痛みも、水分が瞬間消失していく子気味いい音も、熱いという感覚すら置き去り、全てがただ猛烈に失われていくのを感じる。
速さの極致そして同時に終末は、熱鉄さながら輝いて一瞬の欄然を最後に塵と化した。
走っていた。
ただ、走っていた。
このまま燃え尽きても構わない。