年が明けて二日目
年が明けて二日目。
俺はまだ正月気分で、のんびり過ごそうと考えていた。
しかし、三人はすでに日常へ戻り、それぞれの仕事に励んでいた。
寒い冬の中、火鉢の前で三人の仕事ぶりを眺めたり、舟の中で音楽を聴いたりと、正月気分のままにゆったりと過ごしていた。
その日は、一人火鉢の前で、「そろそろ七草粥の頃だな」と思いながら、七草の名前を思い出そうとしていた。
すると、善と新右衛門さんが、背負子を担いだ秀治さんを連れて現れた。
三人の突然の訪問に少し驚いたが、まずは部屋へ招き入れた。
そして、善が今日の訪問の事情を説明してくれた。
秀治さんに頼んでいたダッチオーブンとフライパンが清澄寺に届いたので、それを俺に渡しに来たのだった。
さらに、調理器具を発案した俺に、秀治さんが相談したいことがあるという話だった。
新右衛門さんは寺へ善を訪ねていたが、そのまま一緒についてきたのだという。
頼んでいた調理器具は「来年になる」と聞いていた。
それだけに、まさか年明け早々に届くとは思わなかった。
やはり何か事情があるのだろう。
ちょうど外にいた花里が家へ戻ってきたので、四人分の薄茶をお願いした。
会ったときから無口で、どこか深刻な表情を浮かべていた秀治さんは、目の前の茶碗をじっと見つめ、まるで独り言のようにぼそりとつぶやいた。
「お茶ですか……」
彼はそのお茶を飲み干すと、背負子の包みから頼んでいた調理器具を取り出した。
初めに見せてもらったダッチオーブンは、絵に描いた通り、蓋にはつまみがあり、本体には可動式の吊り手と持ち手がしっかりと取り付けられていた。
とても満足のいく仕上がりだった。
続いて、彼はフライパン二枚を取り出した。
こちらも希望通りに鋳造され、深めに作られ、さらに木製の持ち手までついていた。
多少の重さはあるものの、俺には十分満足のいくものだった。
俺は秀治さんに尋ねた。
「どちらの器具もとても良い仕上がりですが、何か問題があるのですか?相談したいこととは何でしょうか?」
すると、秀治さんは「相談したいのは、これなんです」と言い、背負子の包みから新たにひとつの物を取り出し、俺たちの前に置いた。
それは奇妙な形をした鋳鉄品だった。
つまみが付いた蓋があるので調理器具なのだろう。
しかし、それは鍋とも釜ともいえない代物だった。
秀治さんは深刻な表情で、じっとその物を見つめている。
俺、善、そして新右衛門さんも、それが何なのか判断がつかず、ただ黙って見つめていた。
それでも、秀治さんは口を固く結び、何も言わなかった。
俺たち男四人は、鍋とも釜ともつかぬ物を前に、ただ沈黙を続けた。




