多くの人々で賑わう通り
多くの人々で賑わう通りには、筵を敷いた露店が並んでいる。
善の案内で、鍋釜を修理する鋳掛屋の露店へと向かった。
筵の上には大小さまざまな鍋や釜が並び、その奥では男がふいごで炭を焚き、溶かした金属を鍋の底に流し込み、空いた穴を補修していた。
そして、金槌で叩きながら修理を進めていた。
しばらくその様子を眺めていたが、作業がひと段落したところで声をかける。
まず、俺は昨日描いた絵を男に見せ、それが作れるかを尋ねた。
善が俺の注文する調理器具の絵を見て、「また奇妙なものを考えたな」と感心している。
男はしばらく考えた後、自分が下野国の天明にある鋳物工房で働いており、そこなら製作できると答えた。
彼は鋳物師の親方のもとで修業を積んでおり、その一環として定期的に各地を巡り、鋳掛屋として鍋釜を修理しているのだという。
俺は、秀治と名乗る若い鋳物師にダッチオーブンとフライパンの製作を依頼することにした。
ダッチオーブンは少し厚みを持たせ、蓋も同じ厚さで作るようにお願いした。
そして、それに合わせてオーブンの中に入る渦巻の底網も作ってもらうことにした。
フライパンは少し深めにし、さらに木製の取っ手を付けられるよう工夫してほしいと頼んだ。
せっかくだから、フライパンは二つ注文した。
二つあれば、フライパン同士を重ね合わせて、一つは蓋としての役割を果たせる。
俺は前金として、紐に通した宋銭を秀治さんに手渡した。
この銭の束は銭緡と呼ばれる。
さらに、清澄寺で修業中の善が購入する形を取ることで、その後の取引を信用してもらうことにした。
それから、秀治さんに依頼した調理器具について、いくつか質問を受け、それに俺は答えた。
秀治さんは、俺が描いた絵に真剣な表情で何か注意書きを加えていた。
俺は商品がいつ頃完成し、手元に届くのか尋ねると、「来年になる」とのことだった。
俺は「よろしくお願いします」と言い、秀治さんは「任せてください」と言いながら、紙に描かれた絵に目を落としていた。
そうして俺は善とともに露店を後にした。
賑わう人混みの中で振り向くと、秀治さんはまだ渡した紙を食い入るように見つめていた。




