家の軒先には柿が吊るされ
家の軒先には柿が吊るされ、鮮やかなオレンジ色が色彩の乏しい家に晩秋の訪れを告げている。
日増しに風の冷たさが増していく中、その日、善を含めた五人で夕食の鍋を囲んだ。
冷凍庫に残っていた半端な魚の切り身、小六が山で採ってきたキノコ類、大根、里芋、干し筍、しょうが、ねぎ。
こういう時は、もっと大きな鍋が欲しくなるし、卓上コンロも必要だと感じる。
それに、暖房器具も欲しくなる。
それを善に話すと、「明後日、港の通りで三斎市が立つから、そこで購入するといい」と提案してくれ、さらに買い物にも付き合ってくれるという。
翌日、せっかく調理器具を買うなら、何にでも使えて便利なものがいいと考え、和紙にその形を描いてみた。
厚みのあるダッチオーブンと、その中に入る渦巻きの底網。
加えて、大きめのフライパンも描いてみた。
それから、小六たちに売ることを頼まれた干し椎茸を麻袋に詰め、陶器に小分けにした蜂蜜も準備した。
これらは問丸の和江さんに買取を依頼する。
売れた代金の使い道について、小六たちに尋ねると、「好きに使ってくれ」と言われた。
当日は善と待ち合わせの場所とした問丸へ向かう。
三斎市で賑わう港通りを歩いて問丸に到着すると、店の前で隣の見世棚の主人がにこやかに挨拶をしてくれた。
店に入ると善がすでにいて、和江さんと話しながら俺を待っていた。
まずは和江さんから蜂蜜のお礼を言われ、それを店の両隣にも俺からのお裾分けとして渡したという。
道理で、俺に対して愛想が良かったのだと納得した。
本題の干し椎茸と蜂蜜の買取をお願いすると、和江さんは少し難しい表情を浮かべながら答えてくれた。
蜂蜜や干し椎茸のような貴重で高価なものは、京や鎌倉のような場所でないと商品として扱えないという。
預からせてもらえれば、甚平さんが船で鎌倉へ運び、売ることは可能だが、時間は少しかかるとのこと。
俺はそれで構わない旨を伝え、麻袋の干し椎茸と陶器に詰めた蜂蜜を三瓶、手渡した。
そうして、和江さんから商品の受け渡し証書を受け取る。
その後、和江さんに火鉢の購入を相談すると、通り沿いの見世棚を紹介してもらった。
早速、その店を訪れ、用件を伝えると、店番の男が奥の間へと案内してくれた。
そこには、桐材をくり抜き、中に銅製の火桶を入れた丸い火鉢が置かれていた。
今の家には不釣り合いなほどの大きさだったが、購入を決め、配達もお願いすることにした。




