俺は診察台の前に立ち
俺は診察台の前に立ち、小六に口腔衛生と健康について説明した。
だが、小六を含めて四人は、どうやら何も理解していない様子だ。
「要するに、この診察台は歯の病気を治すためのものだ。痛みやぐらついている歯も、ここで治療することができるんだ」
俺が説明すると、花里が大きく頷きながら答えた。
「うん、私もずっと歯が痛かったけれど、この台に乗ったらすぐに治ったよ」
「まずは、俺が手本を見せるから」と言いながら、俺は診察台に横になった。
虫歯のない俺の治療は、予想通り歯のクリーニングだけであっさり終わった。
俺は何事もなかったように、いかにもさっぱりしたという表情で小六に笑顔を向けて言った。
「どうだい、何でもないだろう。おまえも診察台に横になってみなよ」
「俺はいいや、別に歯が痛いわけじゃないし」と小六は俺から目を逸らし、小さな声で返答した。
「もしかして、怖いのか?花や真之介もやったことだぞ」と口角をほんのり上げて小六を挑発する。
すると、小六は俺を睨み付け、声を荒げた。
「本当に歯は痛くないし、どこも悪くないから、俺には必要ないんだ!」
「本当に怖くないのか?やっぱり怖いんだろう?」と、さらに煽る。
「だから俺には必要ないと言っているだろ!」小六は不機嫌そうに顔を横に向けた。
そんなやり取りを見ていた花里が、小六に優しい声で助け舟を出す。
「小六、怖いのなら無理にやらなくても大丈夫だよ。史郎様も小六に強制しているわけじゃないから」
"The road to hell is paved with good intentions"
「地獄への道は善意で舗装されている」
俺の心の悪魔と花の心の天使が手を取り合った結果、小六は診察台に横たわることになった。
小六は診察台に拘束され、頭部はアームで固定された。
その後、四本の小さなアームが口に取り付き、無理やり開かせると、さらに二本のアームが小六の目の前に現れた。
一方のアームからは細長い針が伸び、もう一方のアームは八本の爪が高速で回転し始める。
その瞬間、目を見開き、体を硬直させていた小六は、静かに目を閉じた。
どうやら、覚悟を決めたようだ。
治療が始まり、二本のアームが口の中で暴れている。
それでも、小六は声を上げることなく耐えて、目を閉じている。
その様子を真之介と花里は抱き合いながら、じっと見守っていた。
恐怖のあまり、目を逸らすことすらできないようだった。
---小六、お口の衛生管理がよろしくなかったようですね、少し時間がかかっていますよ。---
やがて、二本のアームによる治療が無事に終わり、クリーニングが完了し、彼は診察台から解放された。




