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年老いた漁師が巨大カジキと

 年老いた漁師が巨大カジキとの戦いに勝利したように、謎を解き明かし、それを見事に捕らえた義尚。


 彼の目には、ライオンの夢を見ながら眠る老人の姿が映し出されているのだろうか。


 


 何も理解できない有時は、義尚に説明を求めた。


 義尚は有時の問いに関心を示さず、鎌倉から同行した高弁へ問いかけた。


 「鳳凰堂を開基された藤原頼道様と、深い関係にある源氏は誰か分かるか?」


 頬から顎にかけて剃り跡が青く、分厚い胸板と太い腕を持つ壮年の高弁は答えた。


 「従一位にして関白の藤原頼道様には、猶子としての源師房みなもとのもろふさ様と、養子としての源俊房様の二人がおりました。二人は父子の関係であり、藤原頼道様は、その二人とそれぞれ親子の縁を結ばれておりました」


 出来の良い生徒を褒めるように義尚は話をつないだ。


 「そうじゃ、村上天皇第七皇子の具平ともひら親王。その血を引くのが、源朝臣姓を賜与しよされて臣籍降下した、村上源氏の祖である師房様だ。父の師房様にしろ、子の俊房様にしろ、その流れは村上源氏であることに間違いない。この銅銭の所有者である国重史郎は、自ら源氏と名乗りを上げた。藤原頼道を意味する鳳凰堂、村上源氏親子との関係性、源氏を名乗る銅銭の所有者。これを紐解いていけば、自ずと答えは浮かび上がる」


 ここで高弁が腕を組み、思案顔となって義尚に尋ねた。


 「では、何故なにゆえに大僧正慈円様だったのでしょうか。何故、銅銭に慈円様の名前が隠されていたのでしょうか?」


 今度は出来の悪い生徒へ丁寧に教えるように、義尚は言う。


 「簡単なことよ。慈円様がこの銅銭の所有者を保証するということよ。ある意味、ここで慈円様が登場することにより、最終的に全ての要素が揃うのよ。そして銅銭の所有者の身元が明らかになる」


 考え込む高弁に義尚は手がかりを与えた。


 「高弁、慈円様の祖父は誰じゃ。従一位の藤原忠実様ではないか」


 「あっ!」高弁は小さい声を上げて理解した。


 笑いながら解答を出した義尚だった。


 「そうじゃ、藤原忠実様の正室は源任子様で、俊房様の娘じゃ。そして、継室となられた源師子様は、俊房様の実弟である顕房様の娘じゃ。慈円様もまた村上源氏の血を引くお方よ」


 全ての謎を解いた義尚は、深い息を一つ吐いて、寂しそうな表情を顔に浮かべながら、誰にともなく語った。


 「ただ、残念なことは、七年前に亡くなられた慈円様とは、永遠に答え合わせができないということじゃよ」


 その姿は、仕留めたカジキをサメに奪われた老人の姿に重なった。


 ---あの、すみません。二人の頭の中には人名辞典があるのですか?---



 「末代の賢王」として知られた堀河天皇。


 彼の治世の下で、兄弟の俊房と顕房は左右大臣および左右大将の地位を独占し、村上源氏の栄華を極めた。


 このような歴史について、俺は何も知らない。


慈円は天台宗の僧侶であり、歌人です。

歴史書「愚管抄」を記し、「小倉百人一首」では「前大僧正慈円」として知られています。




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