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大広間に案内されると

 大広間に案内されると、侍烏帽子さむらいえぼしをかぶり、直垂ひたたれを着た二人の役人が、床几しょうぎに腰を下ろして待っていた。


 その隣には、紫、紺、黄と異なる色の法衣を纏った僧侶が三人並んで座り、五人の左右には、武装した役人がそれぞれ三人ずつ片膝を立てて待機していた。


 俺は役人に指示され、彼らの正面に座った。


 俺の後ろ左右には、新右衛門さんと善が控えている。


 やがて、床几に座っていた役人の一人が立ち上がり、取り調べの説明を始めた。


 「本日の吟味取り調べ、民部少輔北条有時公にて行うべし。本件は幕府内の限りたりし者のみぞ知る。よりて他言は無用にて候。禁を破り候はば、厳罰をもって処すべし。」


 その言葉は、俺たちだけでなく、大広間にいる全ての者に向けられたものであった。


 その後、北条有時と紹介された役人が、隣に座る僧侶たちへ挨拶をした。


 「天台宗権大僧正、義尚様には、遠路はるばる鎌倉よりご臨席いただき、誠にありがとうございます。同じく鎌倉より高弁様、ここ東条郷より道善房様、ご出席ありがとうございます。」


 彼は深々と頭を下げながら、言葉を続けた。


 「まずは皆様に見ていただきたいものがございます。」


 そう言いながら、有時は手元の藤色の袱紗ふくさから十円玉を取り出し、義尚に手渡した。


 乾いた木の枝のような腕を伸ばし、シミだらけの手でそれを受け取ると、彼はまぶたの重さに抗えず、辛うじて開いたような目で十円玉をじっと見つめた。


 彼は独り言のように呟き始める。


 「日本国は神武天皇の即位より千八百九十二年、鳳凰堂は永承七年に藤原頼通ふじわらよりみちにより開基、十円、十円、十円…。」


 まぶたが細かく痙攣けいれんし、それに伴い、長く伸びた白い眉毛も動いた。


 挨拶が終わると、北条有時は俺に向き直り、威圧的な態度で言葉を投げかけてきた。


 「そこの者、名を申せ。それから、わしが尋ねることには、嘘偽りなく正直に答えよ。この銅銭は本当におまえのものか?どうやって手に入れた?」


 まるで思いついたことを、そのまま尋ねてくるような質問だった。


 俺は冷静に話すことを心がけ、相手を刺激しないように丁寧に答えた。

 

 「国重史郎と申します。いろいろと迷惑をおかけしておりますが、よろしくお願いいたします。その十円玉、いや銅銭は確かに私のものです。あと他に二枚持っています。それから、手に入れたというより、昔からずっと持っていました。」


 俺が話し終えると、さらに彼は質問を続けようとしたが、突然、義尚が手に持っていた中啓ちゅうけいで床を強く叩いた。


 その音に驚いて怯んだ有時の隙をつき、義尚は無理やり話に割り込み、有時を無視して俺に質問を始めた。











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