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すべては十円玉に起因していた

 すべては十円玉に起因していた。


 その表面には日本国の文字と精巧な鳳凰堂の図柄が刻まれている。


 高圧のプレス機が存在しなかったこの時代において、それを目にした者たちには、神業のようにしか映らなかった。


 平野仁右衛門さんは、これは計り知れない貴重なものだと考え、それを地頭の東条氏へ送り、さらに幕府へと送られた。


 受け取った幕府も非常に驚き、氏素性の知れない者が持つものとは考えられず、政治的に不安定な時期であり、御成敗式目が制定されたばかりだった。


 それゆえ、「すぐに取り調べを行え」と命令が下された。




 暗くなりかけた広間に明かりがともり、皿の灯芯が小さな炎を揺らめかせている。


 重苦しい空気が漂う部屋に、四つの影が揺れていた。


 「逃げなされ、今はとにかく逃げなされ」と沈黙を破り、重忠さんが低く言う。


 新右衛門さんは、是とも非とも言わず目を閉じ腕を組んでいた。


 もし俺が逃げた場合は二人に迷惑がかかるのではないかと尋ねると、二人とも「何とかなる。心配するな」と繰り返すばかりであった。


 結局、俺は二人に迷惑をかけることを恐れ、出頭することを決意した。




 鎌倉からやってきた幕府の役人たちは、取り調べの二日前には仁右衛門さんの家に到着し、準備を進めていた。


 まず、俺は取り調べのある当日まで、重忠さんの家から出ることを禁じられた。


 もし逃亡した場合は、新右衛門さんは責任者として罰せられ、重忠さんについては、その家族までも処罰の対象になるとの通告があった。


 その二日間、幕府の役人と新右衛門さんの間では、取り調べの流れや段取りについてのやり取りが行われていた。


 幕府側からは、俺一人の出頭を命じられていた。


 しかし、仁右衛門さんや新右衛門さんからの強い要望により、二人の付き添いが許可された。


 その結果、新右衛門さんと重忠さんが同行することになった。


 ところが、善はそれに待ったをかけた。


 「史郎は俺の親友だから、俺が行く」と断固として主張した。


 父子には多少の口論はあったが、これまで両親さえ見たことのない厳しい表情で迫る善の姿に、最後は重忠さんが折れ、重忠さんの代わりに善が同行することになった。


 話が決まると「史郎、大丈夫だ、俺に任せろ!」と胸をたたく善だった。


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