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ちょいと偉人に会ってくる  作者: 鈴木ヒロオ
夏の末、秋のきっかけ

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油が尽きかけた灯皿

 油が尽きかけた灯皿では、炎が細く揺れる。


 薄暗がりの中で、炎は明滅するように見えた。


 灯芯の先で赤く痩せていき、そのまま沈むように消えていった。


 炎が落ちると、淡い影も、ふいと消えた。


 終わりの煙と、灯芯の焦げた匂いだけが残っていた。


 踊り疲れて、酔いつぶれて、満足げな表情で、一人また一人と広間に横たわる。


 あまり飲んでいない俺も、目まぐるしく忙しかった一日の果てに、腕を枕に横になる。


 床板の冷たさを肌に感じるが、それもじきにおさまった。


 音は広間から遠ざかり、今は耳にあたる、その腕枕から伝わる鼓動だけが響いている。


 ザッザ、ザッザ。


 火照る体は疲れているはずなのに、眠りは静かな夜に訪れない。


 薄く開いた目の端に、新右衛門さんと甚平さんの、向かい合う二人の姿が映っていた。


 残された灯皿の灯りに、胡坐をかいたその姿が浮かんでいた。


 新右衛門さんは大杯を持ち、口に運び、傾ける。


 ググッ、ググッ。


 床からその音が伝わってくる。


 長く息を吐き、飲み干した大杯に瓶子から酒を注ぎ、甚平さんに手渡す。


 両手で受け取る甚平さんは、こぼさぬように、ゆっくり杯を傾ける。


 ふう。


 酒精が口から洩れていた。


 今度は甚平さんが大杯に酒を注ぎ、新右衛門さんに手渡す。


 ググッ、ググッ。


 ふう。


 大杯は、空くたびに、無言のまま満たされていった。


 その光景が、二人の間で言葉なく繰り返される。


 やがて甕の酒が尽きたのか、甚平さんが瓶子の口を逆さにし、振っている。


 誰もが横たわり、誰も気が付かぬまま、二人のあいだにふいと洩れたくぐもった笑いが、最後に残った灯皿の灯りを揺らした。





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