これから住む家は
これから住む家は、広葉樹に覆われた小さな山の東側、急斜面を登った炭焼き跡の開けた場所にあった。
家の裏には、一本の枇杷の木と荒れ果てた畑が広がり、簡素な小屋のような家で、板戸を外すと、中には土間と板張りの部屋があるだけだった。
土間にはかまどと鍋、食器、大小の甕などの最低限の台所用品がそろっていた。
一緒に来てくれた善は、「米、塩、味噌、醤など、まだ必要なものが多い。問丸で手配しよう」と助言をくれた。
「深い井戸があったので、釣瓶を落としてみたが、枯れている。空っぽだ。どうやら水は、石や砂利の間を流れるせせらぎを、甕に集めて使っていたようだ」と、家の周りを調べた善が教えてくれた。
善の話によれば、この山には人が住んでおらず、人里からは少し離れている。
水場がないことでこの場所には人が定住できず、畑も荒れてしまったのだろう。
俺は「とりあえず舟をここに移動させ、早く生活基盤を整えよう」と提案した。
彼は新しい隠れ家ができるのを楽しみにしているようだった。
二人で話をしていると、新右衛門さんが山道を登ってくるのが見えた。
俺の様子と家の状況を確認しに来たのだろう。
挨拶を交わすと、彼は鍔のない小刀と手斧を俺に手渡してくれた。
これは緊急時のための護身用だという。
侍の彼らしい気遣いに感謝した。
その後、三人で山を下り、港で新右衛門さんと別れ、善とともに問丸へ向かい必要な物をそろえた。
浜辺では漁師から魚を分けてもらい、さらに野菜も譲ってもらった。
両手に荷物を抱え洞窟へ向かい、舟へ乗り込んだ。食料品を収納し、操縦席で迷彩モードを確認した。
舟を出発させ、磯山を越え、田んぼや民家を越えて、山の家まで一直線に進んだ。
到着後、井戸のそばで舟上部の多関節ロボットアームを展開させた。
舟自体は迷彩モードで姿を隠せるが、黄色い巨大アームは迷彩ができないようだった。
井戸の底に照準を定め、出力を最小に設定して暗黒放射砲を発射すると、赤い光が井戸の底へ消えた。
翌日、井戸は驚くほど冷たい水で満ちていた。




