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重忠さんに「これからどうするのか」

 重忠さんに「これからどうするのか」と尋ねられたため、しばらくは打ち上げられた浜辺で暮らしたいと伝えた。


 彼は少し思案し、「一人では判断できないので、この辺り一帯の治安を守る地頭代と、幕府からのお墨付きで海の漁業権を持つ大網主とも相談したい」と言った。


 その際に、十円玉を見せたいので預からせてほしいとも頼まれた。


 重忠さんによれば、二人とも顔見知りであり、それほど悪い結果にはならないだろうとのことだった。


 俺は了承し、「よろしくお願いします」と頭を下げて十円玉を預けた。


 今晩は重忠さんの家に泊まることになり、食事も用意してくれるという。


 夕食までの時間は港のある海辺を善に案内してもらうことにした。梅菊さんが草履を用意してくれ、それを履いて出かけた。


 海までは少し距離があったが、珍しい風景に飽きることはなかった。


 遠くには水車小屋が見え、畑では牛がすきを引いている。


 家の裏庭では鶏が放し飼いにされていた。


 海辺に着くと、遠くには小舟で漁をする人々の姿が見えた。


 砂浜では引き上げられた小舟のそばで漁網を直している人がいた。


 船着き場では海中に太い丸太が何本も打ち込まれ、その上に板を渡した桟橋が二本あり、大きな舟が並んでいる。


 その中には帆を下ろした船が一隻、杭につながれていた。


 その港からは大きな通りが延び、その両側には「見世棚」と呼ばれる商店が立ち並んでいる。


 また、物資の輸送や仲介業を行う「問丸」と呼ばれる店もあるそうだ。


 「この村は魚が食えるので飢えることはない。この通りでは三斎市が開かれて、北からも南からも商人が舟で集まり賑やかになるんだ。」


 善は少し誇らしげだった。


 家に戻ると、善の家族と夕食を共にすることになった。


 土間の炊事場から板の間へ案内されると、善には三人の兄弟がいるようで、彼らは並んで座っていた。


 兄弟たちは対面に座った俺を無言でちらちらと見ていた。


 その様子を善はニコニコしながら見ていた。


 重忠さんは、今日の件で早速出かけており、今晩は家に帰らないとのことだった。


 梅菊さんが木の器に鰹の切り身と青菜を入れた雑炊を分けてくれた。


 食事が始まると、兄弟たちの俺への興味は薄れ、夢中で食べ始めた。


 その様子を梅菊さんは優しく見つめていた。


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