その日の夕食後、俺は留守を
その日の夕食後、俺は留守をしていた間の家の様子を真之介から聞くことができた。
棟梁の又左さんは連日休むことなく現場に立ち、皆の作業に細かく目を配り、作事奉行の新右衛門さんは三日に一度やって来て進捗状況を確認し、時には自ら材を担ぎ、作業を手伝っていたという。
真之介は、畑仕事だけでなく、椎茸や蜂の巣箱の様子を見ながら、大工や職人に混じって手伝っていたと話す。
椎茸のほだ木も変わりなく、今年の秋に再び行うであろう植菌のために、建築現場の丸太の端材や、培養に使う木くずを袋に集めている。
それから、三か所の巣箱でも蜂が盛んに飛び回り、そばに新たに設置した巣箱にも営巣が確認でき、さらに他の場所に仕掛けた二つの巣箱にも蜂が出入りしていると、嬉しそうに語った。
これで営巣された巣箱は合わせて八基となり、今年の秋の収穫は大いに期待できる。
養蜂に関しては小六が特に喜び、張り切っている。
普段から柿渋染めの防護服を着て、山を知り山中を走り回る彼は頼りになる。
椎茸栽培については真之介から普段通りの静かな様子ではあるが、畑仕事とともに熱心に取り組む意気込みが感じられる。
働く彼の額にいつも汗が光って、そのひたむきさを物語っている。
家事の全般を受け持つ花里は、二人の佇まいを見守りながら、頬を柔らかな蝋燭の灯りに照らされていた。
三人はそれぞれが、この家での役割を担い働いてくれるので、俺は心の負担になっている仁右衛門さんからの借金について、どこか肩の荷が軽くなっていくような気がしている。
夜は湿りを帯びた気配をまといながら更けていく。
俺は窪地に隠してある舟へ戻るために家を出る。
月明かりを頼りに一人歩く。
草木の息吹く気配は土の匂いと溶け合い、夜に満ちている。
息吹もどこか湿りを帯び、ここにも梅雨の気配がゆらり立ち昇る。
ひたひたと踏む足音に、風がときおり運ぶ海音が寄り添う。
頭上の月は過去も未来も、今の俺にも、何も変わらず照らしている。
ただ、それだけのことなのに、胸の奥に不思議な安心感が広がり、心は落ち着いて定まる。
一人で生きるこの時代ではあるが、小さな明かりを見つけたように、俺の足音は、月光に促されるように自然と速まっていく。




