電子レンジで、シートに
電子レンジで、シートに小分けした冷凍ご飯を温め、できたものを順に大皿に盛っていく。
四人分には十分な量になると、それを皿ごと麻布に包み、籠に入れる。
持って部屋を出ようとしたが、ふと立ち止まる。
貧しい村の人々が暮らしている中で、俺たち四人だけでご飯を食べるのが、どうにも気が引けた。
そこで、部屋に置いてある米俵から玄米を、大きな麻袋に詰められるだけ詰め、袋の口をしっかりと縛る。
手に伝わる重み。
十キロはありそうだ。
彼らに渡すために、これも「よいしょ」と籠に入れ、担ぎ上げた。
肩にずしりと圧がかかる。
舟を出て、村へ向かう。
荷物のせいで息が切れる。
踏ん張りながら道を急ぐ。
小川沿いには田が広がり、ここでも早苗が青々と育っている。
小さな水田は、山の麓からせせらぎの先まで営々続いている。
それなのに、村の人々の毎日の食事は、どうして雑穀ばかりなのだろうか。
そんな疑問が脳裏をかすめる。
燕が俺の頭の上を飛んでいる。
村の三人が待つ建物に着き、床を軋ませながら中へ入る。
ちょうど食事の準備をしていたらしく、乙名の差配で老女が配膳をしていた。
膳の上には、醤で仕上げたシジミ汁と焼いた魚の切り身。
村で用意されたであろう、刻んだ青菜が添えられている。
少し白濁したシジミ汁の匂いに、食欲が刺激される。
三人が待っていたのは、俺ではなく、飯だったようだ。
小六が「史郎、飯を待っていたぞ。早く食わせろ」と言う。
俺は、小さく息を吐き、苦笑を浮かべながら、まだほのかに温もりが残るご飯を籠から取り出す。
小六は自ら、用意された茶碗に飯を移し、俺を待つこともなく、夢中で口に運び始める。
善と花里は、そんな小六の様子を眺めながら、俺のことを待ってくれている。
乙名と老女は、俺と籠をじっと見つめている。
それこそ、穴が開くほどに。
それも無理はない。
俺が森へ消えたと思ったら、今度は温かい飯を持って現れるのだから。
老女は、ぼそぼそと経を唱えている。
俺たちは、乙名と老女が見つめる中で食事をする。
善と花里は行儀よく食べている。
彼らは、特に花里は、食べ物への感謝を忘れない。
俺は少し居心地の悪さを感じながら、箸を動かす。
そうして食事を続けていると、ふと視線を感じ、その先を追う。
開けられた板戸の間から、数人の子供が覗いていた。
そこには、見つめる黒い目、ひくつかせる鼻、咥えた指があった。
その視線に、俺の心が羞恥に晒され、胸が痛む。
花里の箸は止まり、悲しみに青ざめた表情を浮かべている。
小六はすでに食べ終えていて、一人、自分の満腹感に罪悪を感じているのか、下を向いて頭を掻いている。
乙名は俺の目線に気づいたのか、慌てて立ち上がり、子供を追い払う。
戻ってきた乙名は、恥ずかしそうに深く頭を下げる。
俺は、籠に入っている米袋を乙名の前にそっと置く。
「お世話になっていますので、これ、よければ食べてください」
善が、俺がそうすることを分かっていたかのように、俺を見て頷く。
彼の黒目がちな瞳は、深く慈悲に満ちている。
乙名は信じられないという顔をして、言葉を失っている。
老女が、今度は俺に荒れた手を合わせ、搾るような声で唱えている。
「南無」
早苗が育つ水田から、蛙の鳴き声が聞こえてくる。




