家の隣にある空き地には
家の隣にある空き地には筵が敷かれ、そこに米を盛った皿、塩を盛った皿、水の入った容器が並べられた。
その前では、浄顕房さんと善が並んで手を合わせており、その後ろに俺、新右衛門さん、又左さんが立ち、さらにその背後には、小六、真之介、花里、そしてこれから建築に携わる四人の職人たちが、神妙な面持ちで並んでいた。
小六たち三人は、今朝から筍を掘り、それを茹でて干し筍づくりを始めていた。
その作業を中断して、今こうして地鎮祭に臨んでいる。
祭を迎える前、彼らは井戸水で手と顔を洗い、心身を清めてから参加していた。
俺は、こうしたこの時代の人々の、丁寧な振る舞いにいつも感心している。
やがて、浄顕房さんの読経が始まり、場の邪気を払い、土地への感謝と工事の無事を祈る。
読経が終わると、盛られた塩が四方に撒かれた。
そうして、その頃には場の空気も和らぎ、皆は自然と会話を始めていた。
そこへ真之介が新たな筵を運んできて広げると、皆は思い思いの場所に腰を下ろす。
俺は座った人々に「これからよろしくお願いします」と声をかけ、器に酒を注いで回った。
皆は嬉しそうに表情をほころばせ、乾杯の音頭を待っている。
又左さんの器にも酒を注ごうとしたが、彼は下戸のため断られた。
代わりに彼は、俺や善と同じように花里から温めた麦茶を器に注いでもらっていた。
新右衛門さんの挨拶と乾杯の音頭で、場はいっそう和やかな雰囲気に包まれる。
その頃、真之介が茹でたての筍を皿に盛って運んでくる。
小六も皿を運んでくる。
彼は今日のために山からウドを採ってきており、皮を厚めにむいて酢水にさらし、アクを抜いたあと、薄くスライスしていた。
皆はそれらを塩や醤、味噌につけて、酒の肴として楽しんでいた。
そんな中、又左さんはいつもの気難しい顔のまま、ただ一人、筍をポリポリと噛んでいた。
酒も飲まず、場になじめずにいる彼に、俺は「これ、食べてみませんか」と、きな粉棒を盛った器を差し出した。
初めて見る食べ物を前に、どこか寂しげだった彼は不思議そうな表情を浮かべながら一本を手に取り、麦茶をひと口飲んでから、それをゆっくりと口に運んだ。
すると、目を見開き、険しかった眉間のしわがふっとゆるみ、への字だった口元が和らいだ。
さらにもう一本、器に手を伸ばして口にする。
どうやら、気難しい又左さんにも、きな粉棒はすっかり気に入ってもらえたようだ。
いつの間にか、彼の顔がやわらかく綻んでいた。
他の人たちにもきな粉棒を配ると、皆はその不思議な甘さに夢中になり、あっという間になくなった。
その様子を見ていた善が、「史郎、俺の分はどこにあるんだ」と慌てる。
俺は小声で「心配するな。おまえの分はちゃんと取っておいてある」と伝えた。
その言葉に、不安そうな表情を浮かべていた善の顔は、ゆっくりと溶けるように和らいだ。




