三人は狭い板張りの間に座り
三人は狭い板張りの間に座り、俺が話すのを待っている。
ここで咳払いの一つでもすれば、家長の威厳が保たれるのかもしれないが、俺にはそんな気概はない。
ただ、彼ら三人の反応が楽しみなだけだ。
俺はあっさりと「今度、家を新築することにしました」と宣言したが、どこか声が上ずっていたかもしれない。
それを聞いて三人は驚き、ぽかんとしていた。
最初に口を開いたのは小六だった。
「俺の家ができるのか」
いや違う、おまえの家じゃない、俺たちの家だ。
そう思いつつ、「そうだ。俺たちの新しい家を作るんだ」とさりげなく訂正して答えた。
真之介と花里は何も語らず、うつむいて少し震えていた。
俺は三人に仁右衛門さんから借金して、新しい家を建てることを話した。
「つきましては、皆さん、これからはもっと働いてください」
俺はおどけた調子で話したが、真之介は顔を上げ、自分に言い聞かせるように「働く。死ぬ気で働く」とつぶやいた。
花里からは、いつもの笑顔が消え、真之介の言葉に何度も頷いている。
彼らの本気度がその雰囲気で伝わり、家に対する熱量と真剣さは予想外だった。
小六は恍惚とした表情で、「俺の家、俺の城」と独り言を繰り返す。
---小六、やはりおまえは論外だ。---
それから三日後、新右衛門さんが厳しい顔をした男を伴い、俺の家を訪れた。
新右衛門さんは宮大工の又左と紹介し、「今回の家を建てる棟梁だ」と説明した。
そして、新右衛門さんは俺の世話役として作事奉行となり、事業に参加することになった。
棟梁となる又左さんは、「仁右衛門さんの肝いりでもあります。建築にあたっては尽力させていただきます」と頭を下げた。
俺も、いよいよ始まるのかと思いながら、少し緊張して「よろしくお願いします」と挨拶した。
それからは、新右衛門さんと又左さんのやりとりで話が進んだ。
和紙に地形を描き、建物の割り振りを書き込んでいく。
主屋、離れ、厨と呼ばれる台所などの建物群、また離れた場所に厠、つまりトイレも造られることになった。
会話の途中で、新右衛門さんから俺の希望を尋ねられた。
俺は一つだけ、舟を収納できる、内部に柱のない倉庫のような建物を造ってほしいことを頼んだ。
二人からは、その建物は何かと尋ねられたが、「先祖を祭るため」とだけ答えた。
又左さんは納得し、絵図にその建物を描き加えた。
そうして彼からも尋ねられた。
家の裏や林の脇に野積みにされている材木を使っていいのか、ということだった。
畑を開墾する際に切り出した木々のうち、細いものは小六がろくろの材料や椎茸の原木に使った。
しかし、幹の太く長いものは大量に放置されていた。
俺がそれを了解すると、又左さんは「それで工期は相当短縮できる」と語った。
その後、彼は地面の状態を入念に確認し、土を掴んでは質を確かめていた。
そして、詳細な絵図面を仕上げて、「それを持って改めて伺います」と言い、新右衛門さんと共に帰っていった。




