昼間、日差しはあるものの
昼間、日差しはあるものの、冬の冷気はまだ深い。
畑の脇の林へ入ると、陽の光が届かないせいか、さらに寒さが身に染みる。
待ちわびる春の気配は、まだ遠い。
俺は真之介とともに、椎茸の原木の様子を見に来た。
原木に被っている枯れた枝葉を払い、その下にある筵をめくる。
すると、山積みにされた原木から、ほのかに伝わる熱を感じた。
硬い幹の内側で菌糸が健やかに生きている。
一つ一つの原木を確認すると、菌注入の穴や切断面の木口に白い菌糸が広がっていた。
原木はどれも立派なほだ木へと成長している。
よく見ると、枕木にしていた木材にも白く広がる菌糸の跡がうっすらと見える。
俺はそれを見てにやりと笑うと、真之介が「うまくいっているのですか」と尋ねる。
俺は大きく頷き、「よし」と答えた。
それから、俺は武さんのメモを思い出しながら、書いてあったムカデ伏せという手法で、ほだ木を林の中の斜面に「X」状に連ねて重ねていった。
百二十本あまりのほだ木を並べ終えると、俺は息が上がり、汗をかいていた。
冬の間に、すっかり俺の体は鈍っていた。
家に帰ると、善が「餅の友達、団子の親戚。遠くの親戚より近くの他人じゃないのか」と、どこか皮肉を込めた挨拶で、腕組みして待っていた。
おそらく、花里からパンのことを聞いたのだろう。
パンを口にする機会を逃したことに頬を膨らませている。
まず、俺は頭を下げて謝り、善にどこかで牛乳が手に入らないか尋ねた。
牛乳があれば、もっとおいしいパンが焼ける。
その時は、一番に善に食べてもらうと約束すると、彼は機嫌を直してくれた。
善によれば、春には村で子牛が生まれるので、手に入るはず。
それを手配すると約束してくれた。
夕食のすいとんが、火鉢の上でダッチオーブンの中で大根、水菜、ごぼう、ネギ、魚の切り身と一緒にぐつぐつと煮えている。
魚のあらと椎茸で出汁を取り、醤で仕上げた醤油味。
五人で囲んだダッチオーブンの中で、すいとんが白い湯気を立てている。
みんな、椀に注ぎ分けた汁の中で、野菜の間から浮かぶつるつるのすいとんを、舌を焼きながら美味しそうに食べている。
食べ終えた善が、「今日は舟に燃料補給したので、特に腹が減っている」と俺に椀を差し出す。
そう言いながらも、善は彼にしかできない、舟へのエネルギー補給には、いつも気をつけてくれている。
俺は、その椀にすいとんをなみなみと盛って手渡すと、彼は嬉しそうな眼をして答える。
食後、それぞれが春への思いを募らせる。
小六は、蜂の巣箱を増やすことを楽しみにしている。
真之介は、畑と椎茸の収穫を楽しみにしている。
花里は、相変わらずみんなの嬉しそうな顔を見るのが楽しそうである。
日が落ちると、外は寒さがますます深まり、家の外を覆う。
家の中には、暖かい春への希望がふくらみ、俺たちを包んでいく。




