第56話 3人での生活?
「さとくんお腹すいた~」
「今作って…ってなんで裸なんだよ!!着替えてからこっちこいよ!!」
風呂からあがった姉ちゃんは裸でリビングに来ていた。
「だって~着替えがなかったんだもん」
「せめてタオルをまいてきなさい!!」
「どおして~?姉弟ならいいじゃん」
「姉弟でもだめなものはだめなの!!」
「お姉ちゃん裸でそっち行っちゃだめだよ!」
香織が走ってリビングに来る。
そして姉ちゃんにタオルを巻く。
「か…香織!!」
「ん?あっ!悟君見ちゃだめ!!」
香織はタオルを一枚巻いただけの状態だった。
それから香織たちが着替えを終えてリビングに戻ってきた。
「姉ちゃんは料理できるようになったの?」
「まったく!!」
「威張って言うなよ…」
「お姉ちゃんって料理できないの?」
「もしかして香織ちゃんできるの…?」
「うん。将来のためにも必要だから…」
「そうだぞ姉ちゃん。結婚したらちゃんと姉ちゃんは料理しなきゃいけないんだから」
「いいもん私はさとくんと結婚するから」
「だから姉弟だろ…」
「戸籍上は違うって何度言ったらわかるのかな~」
「やっぱりお姉ちゃんは悟君のことが好きなの?」
「もちろん!あっ!香織ちゃんはさとくんの小さい頃の写真とか見たことある?」
香織は首を横に振る。
「じゃあとってくるね~」
そう言って姉ちゃんはリビングを出ていった。
「やっぱりお姉ちゃんは悟君のことが好きなのか~」
香織がいきなりそんなことを言う。
「あっ。香織別に姉ちゃんのことお姉ちゃんって呼ばなくてもいいんだぞ?」
「ううん。私はお姉ちゃんって呼びたいから呼んでるんだよ?私ってお兄ちゃんとか兄妹
に憧れてたんだよね。でも悟君お兄ちゃんって呼ばれるの嫌そうにしてたから諦めてたんだけどそうやって呼ばせてくれる人がいるのは正直嬉しかったんだよ」
「そうだったのか。でも同級生からいきなりお兄ちゃんって呼ばれるのは辛いだろ」
「それもそうだね」
香織はこのとき笑っていた。
父さんたちがアメリカに行ってから初めて見る笑顔かもしれない。
「持ってきたよ~!!」
姉ちゃんはアルバムを上にかざしながらリビングに入ってきた。
「姉ちゃんよく見つけられたな…」
「さとくんが隠しそうな場所なんて簡単なんだよ」
「次からはちゃんと考えようかな…」
姉ちゃんはテーブルに座ってアルバムを真ん中に置く。
そしてアルバムを開く。
「ほらこれがさとくんだよ」
姉ちゃんが一枚の写真を指さす。
「かわいいね」
「なんで今はこんなに憎たらしく育ってしまったのか…」
「悪かったな」
「で、これが…」
姉ちゃんが他の写真を指さす。
しかし俺にはその写真ではなく他の写真が目に入る。
それは母さんの写真。
俺は無言で立ち上がりテレビをつけてソファーに座る。
「悟君?」
「さとくんまだ苦手なんだな…」
「?」
「この写真に写ってる人よ」
「誰ですか?」
「私たちのお母さん」
「この人が…」
「あいつは俺と父さんと姉ちゃんを裏切ったんだ」
俺はテレビを見ながら香織に言う。
「うちはお母さんが浮気して離婚したからね…」
美里の顔が暗くなる。
「俺はあいつを許せない」
「さとくん…」
「悟君…」
俺は立ち上がって夕食をよそう。
「夕飯にしよっか」
「大丈夫なの?」
香織が心配そうに聞いてくる。
「ん。大丈夫」
「さとくんのご飯初めて食べるな…」
「確かにね。びっくりするはずだよ」
それから俺たちは夕食を食べた。
姉ちゃんはおいしいおいしいとよく食べてくれた。