第54話 大きくなって…
すいません54話のセリフで『一郎』を『徹』と間違えていたので修正しました。
今日は土曜日。
父さんと母さんがアメリカに行く日。
俺は布団に包まっていた。
コンコン…
部屋の扉からノックが聞こえる。
「悟、行ってくる」
父さんだった。
俺は何も返事をしなかった。
多分それは香織も同じだろう。
昨日香織は一緒にアメリカに行くと言ったがそれは断られた。
断った理由はせっかく積み上げてきた友人関係を壊したくないからだそうだ。
ガチャッ!
家の扉の鍵が閉まる音が聞こえた。
多分父さんたちが行ったのだろう。
別れが辛いはずなのに…
辛いはずなのに1分1秒でも長く父さんたちと一緒にいようとしなかった…
父さんたちが家を出てそれを実感する。
「うっ…」
涙がでてくる。
こんなにも別れが辛いなんて…
アメリカでもう誰とも別れたくないって香織と話していた矢先にこれだ…
「最悪だ…」
なんで…
なんで別れなきゃいけないんだ…
別れるにしてもなんでちゃんと別れの言葉や言いたかったことを言わないんだ…
自分を責める。
「くそっ!!くそっ!!くそっ!!」
「悟君…」
香織が部屋に入ってくる。
「私ちゃんと別れの言葉言えなかった…」
香織は泣いていた。
香織も同じだった。
バララララ!!
「「!?」」
外からいきなり大きな音が聞こえる。
俺は窓を開けてみる。
そこには一台のヘリ。
「お前ら後悔してるんだろ!?早く乗れ!!」
そのヘリには哲也と遥さんが乗っていた。
俺と香織は顔を見合わせてうなずき合う。
ヘリに乗ってもヘリは空港には行ってくれなかった。
「なんで空港に行ってくれないんだよ!」
俺はついそう言ってしまう。
「なぜ空港に行かなきゃならないんだ?」
遥さんが意地悪そうに顔のはしをゆがめる。
「なっ…」
しかしそこで思い出す。
俺たちの部活はなんだ?
「遥さん…あなたの部活に依頼します。俺たちを空港に連れて行ってください!」
「最初っからその言葉をまってたんだよ!!」
遥さんがパイロットに指示をだす。
「でっかい依頼がきたな!哲也!」
「そうだね」
「「…」」
俺と香織は黙っている。
「ごめんな悟。転勤のこと俺知らなかったんだ…」
「哲也があやまることじゃないよ」
そんなやりとりをして空港につく。
「お前らの親父さんたちは8番ゲートだ!!」
遥さんが叫ぶ。
「「ありがとうございます!」」
俺たちは走って8番ゲートに行く。
そこにはもう父さんたちが入ろうとしてた。
「お父さん!!」
「母さん!!」
俺たちはそれぞれ血のつながっていない親を呼ぶ。
「お父さん!!お母さんを…お母さんをよろしくおねがいします!!」
「母さん!!父さんは頼りないけど…頼りないけどやるときはやるから!!そんな父さんを好きでいてあげて!!」
俺と香織は息を吸う。
「「いってらっしゃい!!」」
父さんたちは片手で顔を覆ってあいてる手で手を振った。
「いつのまにかあんなに成長してたのか…」
一郎は機内で愛理に話しかける。
「そうね。母さんもびっくりしちゃった」
「別れって辛いな」
「うん…」
二人は泣いていた。
そして悟と香織の両親『竹中一郎』と『竹中愛理』はアメリカに旅立っていった。