第19話 さようならという言葉は誰かが必ず泣く
「香織…?」
「…」
香織は黙っている。
「何で黙ってるんだよ!!香織!!」
「…」
香織が心配そうな目で見てくる。
「いまの佐藤さんに話しかけちゃだめだよ悟」
「理沙?」
「もう悟はあきらめたんでしょ?」
「なに言ってるんだよ理沙…」
「だから佐藤さんも結婚するって言ったんでしょ」
「はぁ!?」
「じゃあ悟君、私はもう行くね…」
「いつのまにそんなんになったんだよ!?」
「さようなら…」
「香織!!香織!!」
その声は届かない。
「待ってくれよ!!あれ…?夢?」
「さ…悟君…?」
香織がすこしおびえている。
香織の手には毛布があった。
「香織がいる…香織ーーーー!!」
俺は思わず抱きついてしまう。
「えっ…!!ちょっと…!!悟君!?」
「よかった…よかったーー!!」
「なにがあったのかわからないけど…怖い夢でも見たの…?」
「あっ…」
俺は今何をやっているのかに気が付く。
「ご…ごめん!!」
すぐに香織から離れる。
「いや…別に…」
なんか気まずい…
「と…父さんたちの様子見てくるね…」
「お…お母さん達なら結婚届を出してくるって…」
タイミング悪いよあの二人…
「ってことは…これで香織も竹中になるのかな…?」
「多分そうなるね」
そっか…ってあれ?香織が家族になるってことは俺が香織と付き合ってそれから結婚ってことになっても結婚できないってことか…?
それは困る!!
でももう遅いしな…
いや、そもそも付き合うってこと自体ないか(笑
はぁ…
悲しいよなぁ…
あの夢はきっと警告だったんだろうな…
「悟君?どうかしたの?」
「い…いやっなんでもないよ」
「そっか」
香織が笑顔で答えてくれる。
「悟君はわたしにお兄ちゃんってよばれたい?」
「な…」
俺はその『お兄ちゃん』に妙にどきどきしてしまいこたえられなかった。
「ねえどっち?」
「ば…ばかなこと言ってんじゃねえよ」
「なあんだ残念」
「ん?」
「悟君は妹キャラに萌えると思ったんだけどなぁ」
「はい?」
「悟君が萌えるキャラとはいったい…なんてねっ冗談だよっ」
か…かわいい
俺は本当にこの娘と同棲なんてできるのだろうか…?
悟はそんなことを考えていた。