表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/137

第20話 俺がこの先2人を守るから見守ってくれよ…?

俺は子供達を父さんに任せて病院に行く。


一体なにがあったんだよ…


帰って来たら香織が倒れてて子供達が泣いてて…


医師が俺のもとにやってくる。


「あの、香織は…?」


俺は医師にたずねる。


医師は暗い顔をする。


なんだよ…


なんでそんな顔するんだよ…


高校生の時みたいに『助かった』って言ってくれよ…


「全力は尽くしました…」


「そう…ですか…」


俺は力なく床にひざをつく。


「原因は…?」


「脳内の出血ですね。高い所から落ちて頭を打った可能性があります」


「そうですか…」


なぜかその時俺は涙が出なかった。


きっと実感がわかなかったんだと思う。


俺は1回家に帰る。


「悟」


「父さん…」


「どうだったんだ?」


俺は父さんの言葉を無視して子供達のもとに行く。


子供達は寝ていた。


俺は2人の頭をなでる。


「悟…」


「黙っててくれよ!!」


俺はつい怒鳴ってしまう。


「悪かった…」


そう言って父さんはどこかに行った。


次の日の朝。


子供達に香織が死んだことをつげる。


「じゃあ母ちゃんにはもう会えないの?」


「ママはもういないの…?」


2人が涙目で言ってくる。


俺は黙って首を縦にふった。


「「う…」」


「「うああああああああああああん!!」」


2人が泣き出す。


俺は2人を抱きしめる。


なんでこんな状況でも俺は涙が出ないんだろうな…


涙が出ない理由はわかっている。


香織が死んだのを認めてないから。


まだ香織に会えるって思ってしまっているから。


わかっているのに認められない。


「俺が…俺が…ひっく…母ちゃんに腹減ったなんて言ったから…!」


優輝がそんなことを言う。


「どういうことだ優輝?」


「俺が腹減ったって母ちゃんを起したんだ…それで母ちゃんは階段から…」


そうゆうことだったのか…


でも悪いのは優輝じゃない…


悪いのは…


「優輝…お前が悪いんじゃないよ。俺が悪いんだ…」


悪いのは俺だ…


俺があの時須藤の誘いを断って早く帰ればこんな事にはならなかった。


須藤にあんなに堂々と1人の女性を守るとか言っておいて守れてねえじゃねえか…


だめだな俺…


数日後香織の葬式が開かれた。


目の前に香織の死体がある。


俺の好きな顔がいま目の前にある。


俺の好きな人が目の前にいる。


その人は目を覚ましてくれない。


「なあ、香織…目を覚ましてくれよ…なあ…!」


どんどん視界がにじんでくる。


俺は香織に触れる。


冷たい…


俺の好きなぬくもりはもうない。


「香織…香織…香織…香織…」


何度も香織の名前を呼ぶ。


もう香織は俺の名前を呼んでくれない。


失いたくないと高校生の頃に思ったのに…


失っちまった…


キュッ…


俺の服がつかまれる。


「…?」


俺は涙で汚れた顔で振り返る。


そこには夏希と優輝がいた。


2人は心配そうな顔で俺を見る。


あっ…


俺はすぐに顔の涙を拭く。


俺には子供達がいる。


香織と俺の愛の形がそこにいる。


「パパ大丈夫…?」


「父ちゃん…」


「大丈夫だよ」


俺は2人の頭をなでる。


そうだ。


俺は香織が死んだからっていつまでも悲しんでるわけにはいかないんだ。


子供達を守らなきゃいけないんだ。


香織、見ててくれよ?


俺が子供達を守る姿。


香織のことは守れなかったけど絶対に子供達は守るから。


俺がちゃんとできるように香織が見守ってくれ。


俺はそれだけでがんばれるから…


な?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ